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金融政策の限界

もともと金融政策が限界なのは明らかだった。

 

日本は他の国に比べて、デフレの年季が違う。頑強、強固なデフレだ。節約術、クーポン、割引が世間に溢れているがこれは、デフレを進行させ、景気には逆効果だ(節約されて日本全体で買われる量が増えれば別だが)。消費者物価上昇率も過去から基本的にマイナス。

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 資料:GLOBAL NOTE 出典:OECD

 

2014年に物価が上昇したが、価格を上げた会社の業績は失速(商品が売れなくなって)。2015年の物価は低下。(ユニクロの失速は2度の値上げによるもの。)

 

〇日銀の責務は、物価安定だ。物価が下がり続けている現状では、インフレ目標を設定することは望ましい。ただ、物価上昇は景気回復が前提だ。景気回復によりモノを買う人(需要)が増えるからモノの価格が上がるのであって、景気回復のためにはまずはモノを買う側である家計にお金が届くことだ。

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金融政策は家計にお金が届くという意味で効果が薄い。すなわち、金融政策は家計に「お金を貸す」(①)ことであり返していく必要があるが、財政政策は基本的にお金を返す必要がない。すなわち、財政政策は「給料で払う」(②)、「タダで渡す」(③)であり金融政策よりも景気回復効果が高い。(効果は①<②<③)

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日銀総裁が財政政策との協調を重視する姿勢を示すなど、財政政策の必要性が少しずつコンセンサスになりつつある。今後、効果的な財政政策が実行されることを希望する。(一番効果的なのは家計に「タダで渡す」減税・手当、次に「給料で渡す」公共事業だが。)

 

 

 

 

中国が経済崩壊しない訳

中国がまたも2兆円の大盤振る舞いだ。

 

インドネシア高速鉄道計画では、日本と競い合った結果、2015年に中国が受注に成功したが、それも大盤振る舞いの結果だ。

インドネシア高速鉄道計画 - Wikipedia

 

〇確かに中国の政府債務残高は大幅に増加してきている。ただし、米国の増加ほどではなく、日本よりもまだ少ない。他国の残高と比較すればまだ余裕があるということだろうか。なお、債務残高にはヘリコプターマネーはカウントされないので注意が必要だ。すなわち、お金を刷って、ただで地方や銀行に配る場合だ。これは自国通貨ならいくらでも可能だ(副作用はインフレ)。

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・資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF(政府債務残高対GDP比にGDPを掛けて算出。日本の債務減少理由は推測。)

 

〇株価(上海総合)でみれば中国は昨年、バブルが崩壊している。

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〇ただし、株価が上がろうが下がろうが、元の投資額が減るわけではない。すなわち、おカネは消滅せず、人々の間を移っていくだけだ(天下の周りモノ)。すなわち、投資マネーはもともと余剰資金である限り、投資され続けるのだ

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〇借金して株に投資していれば破産だが、余剰資金で株を購入している限り経済に大きな影響は及ぼさない中国の貯蓄率は高く、株等へのリスク資産への投資(投機)はアブク銭でやっているのではないか。(なお、グラフの日本の貯蓄率の低下は高齢化による資産の取り崩しによる。)

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・資料:GLOBAL NOTE 出典:OECD

 

 〇中国では相変わらずバブル(不動産バブル)が発生して、昨年、もう終わりそうだ。次のバブルは何だろうか。

 

(参考)

 

 

 

量的金融緩和と円安

〇これまでの日銀の量的金融緩和は基本的に円安政だ。2016年から円高に向かっているのは、(マイナス金利の導入の一方で、)量的緩和から質的緩和に方向転換した失望感からだ。円安のためにはボリューム(量)により金融緩和を更に拡大しているというメッセージが必要ということ。

 

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〇アナリストにとって株価が上がることが基本的に望ましい。アナリストの所属する証券会社の手数料が増えるからだ。金融緩和でアナリストが量(ボリューム)を求めるのは、量的緩和により円安となり日本株が割安 ⇒ 株価が上がるからだ。これまでの日銀政策の状況からは、アナリストは量的緩和がインフレや景気改善に大きな効果があるとは思ってはいないだろう。アナリストにとっては基本的に「株価が上がるか」が重要なのだ。 

【日銀 追加緩和 可能性】リフレ派 日銀政策批判 エコノミストも「金利」重視反発 4ページ

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〇ただ、日銀のミッションは物価政策(今はインフレ誘導)であって、為替政策ではない。米国も気にしている。黒田総裁は量の更なる拡大も考えているようだが、それは円安誘導につながることとなる。更なる量的拡大には慎重な判断が必要となる。


アベノミクスとトリクルダウン理論

トリクルダウン理論とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論または経済思想で、サプライサイド経済学における中心的な思想だ。(しかし酷いネーミングだ。)

トリクルダウン理論 - Wikipedia

 

アベノミクスはトリクルダウンを狙ったものだ。

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アベノミクスの狙いは次のとおり。会社の利益は①会社②株主③従業員④消費者で分け合うこととなるが、特にアベノミクスでは「③従業員の賃金上昇」で景気回復を狙ったものだ。(①の会社による投資もあるが、投資先の会社と合計で見れば賃金上昇が狙いと考えて良いだろう。)

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それぞれどうなったか見てみる。なお、2014年度の企業の純利益は41兆3101億円と10%も増えた。これは、アベノミクスの思惑どおりだ。

 

会社の内部留保、2014年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の期末の利益剰余金は354兆3774億円と1年前に比べて26兆4218億円も増えた。率にして8%の増加である。

②2015年度の株主配当総額は前年度より1割多い10兆9000億円と初めて10兆円の大台に乗せるとのことだ。

従業員の給与の上昇は見られない(2015年3月時点)。失業率が4%まで低下したら上昇するとのこと。

物価の下落が見られている。会社は利益を商品価格の引き下げに回していることになる。これは消費者への利益還元となる。

 

〇以上、現時点では「③従業員の賃金上昇」は見られない一方、①、②、④は進んでいることが分かった。会社は利益が出れば、まずは競争で激化した商品価格を引き下げ従業員の賃金上昇は後回しになるのだろう。この会社の行動はデフレを促進させるものであり、(供給側の視点で緩和すれば景気が良くなるという)サプライサイドの理論は今の日本には無理があると思う。 

 

 (参考)


 

 

 

働く意識とワンピース

社会主義の旧ソビエト連邦での「働かざる者食うべからず」とは、資本家自身が実際に働かず投資で食べていることを戒めるものであった(資本家は搾取するのではなく、しっかり働けということ)。

働かざる者食うべからず - Wikipedia

 

〇日本では、「働かざる者食うべからず」は、「働ける者は食べていくために働け」という労働者に対するものだ。第二次世界大戦における敗戦後、日本に資源がないことから、日本国民は、他の国よりももっと働かないといけない意識があった。そして働くことが尊いとされていた。  

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〇戦後の経済成長は大きく3つ(高度成長期(1954~1973年)、中(安定)成長期(1973~1991年)、低成長期(1991年~))に区分できる。それぞれの働く意識を見てみる。

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図録▽経済成長率の推移(日本)

 

〇 平均年収で見てみると、中成長期も着実に賃金は上昇しているので、働きがいはあったと見れる。低成長期に賃金上昇が止まっている

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 サラリーマン冬の時代(先細りするサラリーマンの年収)(1)

 

〇生活の質(耐久消費財の普及)で見てみる。低成長時代の2000年頃には、車・エアコンもほぼ普及し生活の質はある程度満たされたと言える。そのため、がむしゃらに働くという意識はなくなったのでないか。この2000年は、パソコンやインターネットが広く利用されるようになってきた時だ。

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〇生活向上で見ると、オイルショックにより、中成長期に入って急激に「生活が低下している」と感じている人が増えたが、低成長期で更に悪化した。

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図録▽生活の向上感の推移

 

 〇新入社員の働く目的は、2000年以降、経済的豊かさ(仕事重視)よりも、楽しい生活(仕事以外を重視)に比重が変わってきた2000年はインターネットが普及・ゆとり教育実施の時期だ。情報量が飛躍的に増加したことによる楽しみ方の多様性増加や、頑張らなくてよいという意識の変化意識が起こった可能性がある。この背景には、上のとおり賃金上昇が見込めなくなったことや生活の質が十分に満たされていることも要因だろう。

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 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/13/dl/1-02-4.pdf

 

〇政府もワークライフバランス(仕事以外も重視)を推奨している。


〇ただし、一生懸命に働くということがネガティブになってはいけない。過去の日本の経済成長は夜も寝ずに働いた先人のおかげでもある。日本の良質なモノづくり・おもてなしはこの働きによって成り立っている部分もある。当然ながらブラックな労働は排除されるべきである(形式だけの無駄な業務は排除されるべき)が、勤労そのものは尊重されるべきだ。


〇ワンピース作者 尾田氏の過度な働きぶりが批判されている記事があった。

ワンピース・尾田栄一郎先生のブラックな仕事ぶりが話題に!一方、冨樫先生は? | やらおん!

ワンピースの(質・量とも十分な)面白さは、この尾田氏の働きによって読者に提供されているのだ。政府のワークライフバランスの推進も、((判断は難しいかもしれないが)個人意志での)過度な働きぶりを批判することの無いように十分に注意してほしい。

 

P.S.尾田さん、ありがとうございます。無理はなさらないように。一(いち)ファンとして応援しています。

 

 

NASAの憂鬱

NASA木星の衛星に関する驚くべき発表を予告した。 

 

NASAとは関係ないが、例えば、火星に関しては蛇らしき生物が発見されたと話題になった。(うーん、ひび割れに見えますね。)

火星で這う蛇らしき生物発見|サワークリーム茶茶茶

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例えば、火星に「前方後円墳」らしきものが発見されたことも話題になった。(丘ですかね。)

【朗報】火星に「前方後円墳」が発見される!日本に文明を伝えたと主張!|面白ニュース 秒刊SUNDAY

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期待が高まるが、実はNASAは2010年にも予告の経験があるNASA宇宙生物学上の発見について」と題した会見予告を公表。米CBSや、CNNのニュースブログは「地球外生命体発見か」と報じ、国内の一部新聞社やテレビ のワイドショーも取り上げた。インターネットなどを通じて全世界で計数万人が視聴したが、「ヒ素を食べる細菌の新発見」「 DNA ベースではない生命形態」との会見内容に 肩すかしを食らった。(煽られてなのかは分からないが、)この内容は、日本経済新聞の1面を飾った

 【ズコー】宇宙人発見かと思ったのに…NASAにやられました

(「NASAけない」、「いい加減にしNASAい」、「世間を知らNASAすぎる」、などのネット意見あり。)

 

〇 今回の件、次のHPに詳しく載っています。

このブログでは2010年のNASAの発表内容は実は誤りであったこと、今回の発表は、「火星に流れる水が存在する可能性がある」という内容であることが書かれている。今回の件もすごいことかも知れませんが、一般的なインパクトは小さいですね。

 

〇やはりここで問題になるのは「なぜNASAは予告するのか?」という点です。2010年の際にも今回も、縮小される予算の問題ではないか、と言われています。NASAの予算はアポロ計画時(ソ連と競い合った宇宙競争時代)からは大幅に縮小しています。

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 〇ただ、最近は予算の縮小傾向は見られません(2014年は176億ドル)。日本の方がハッキリとした縮小傾向です。 

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http://www8.cao.go.jp/hyouka/dokuritsu/bunkakai/utyu1th/shiryou5-12.pdf

 

〇以上を踏まえて、なぜNASAが話題作りをするのか理由を3点考えてみました。 

(2)(ネットで言うとおり)予算確保のため

オバマ大統領は過去にNASAの計画を中止に追い込んだ経験があります(有人月面探査を目指す計画について、多大なコスト超過等から2004年に中止しました。その後、NASAと科学界が強く反発したため、オバマ大統領は月から有人火星探査計画に変えました)。その経験からNASAは実績作りを焦っているのでは、とも考えられます。

http://www.fujisue.net/image/%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E3%81%AE%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%94%BF%E7%AD%96.pdf

オバマ大統領「月の代わりに火星」 : 東亜日報

また、スペースXなどの安くすむ宇宙開発の可能性も高まっています。NASAの存在意義を示す必要があります。

(2)「驚くべきことである」という純粋な科学者の社会的使命感のため

NASAのモットーは、「すべての者のための利益」です。

なお、今年は気象予報も行いました。(日本ではその予報は当たらなかったと思います(台風は多かったですが)。)

(3)(インパクトがあまりないと分かっていた上で)話題作りを先行するため

ある教授は2010年に「科学的には面白い話だけど、成果を大きく周知したいNASAの 思わせぶりな作戦にメディアもみんなもうまいことやられたね」と話している。 

 

 

〇以上、いろいろと考察したが、「予算確保のため」が目的なのであれば、JAXAは「煽るようなまね」をしないでほしい。探査機「はやぶさ」の例もありJAXAの素晴しさは認識しています。また、NASAは軍事に走らないようにくれぐれもお願いしたい。米国だけでなく「すべての者のための利益」に。

劇訳表示。 : 北朝鮮「米まで届くミサイル用エンジンの実験に成功!」【海外反応】

 

 (参考)

アメリカ航空宇宙局 - Wikipedia

 

 

人口減少ボーナス2

日本の人口減少によるボーナスについては、過去にブログに書いた。

安倍首相も同様のことを言った。人口減少を課題視する風潮を変えたいのだろう。

「日本は高齢化しているかもしれません。人口が減少しているかもしれません。しかし、この現状が我々に改革のインセンティブを与えます。日本の人口動態は、逆説的ですが、重荷ではなくボーナスなのです」

 

改めて確認すると、確かに人口は減少する見通しだ。2030年では、2013年から8%減少する。

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 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf

 

生産年齢人口の減少は、単純平均で毎年0.8%だ。

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 一方で仕事の減少を見てみる。どれだけ生産性が向上したのか見れば、(需要が増えていない状況では、)仕事の減少につながる。

(1)経済学者の飯田泰之は「放っておいても人間は毎年平均2%ずつくらい効率が上がる。効率化の原因は機械だけでなく、知識・思考法も生産性を向上させる。経済成長が0%だと、必然的に要らない人がでてきてしまう」と言っている。(飯田泰之雨宮処凛 『脱貧困の経済学』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年、170-171頁。)

経済成長 - Wikipedia

毎年2%効率が上がるというのは、毎年2%仕事が減るということだ。

 

(2)オックスフォード大学のオズボーン准教授は、今後10~20年程度で、約半分の仕事がなくなると予測している。20年後とすれば仕事の減少は平均的に毎年2.5%(=50÷20)だ。

gendai.ismedia.jp

 

(3)OECDデータでは、日本の一人当たりの労働生産性は毎年1.2%改善してきた。 f:id:beatle_hat:20160924183526j:plain   出典:OECD  

   資料:GLOBAL NOTE(http://www.globalnote.jp/post-10473.html

 

以上、例えば(2)なら仕事の減少が毎年ー2.5%の一方で、人口の減少は毎年ー0.8%にとどまる。人口減少を上回って、仕事は減っていくため、単純に言えば、その差の1.7%は失業ということになる。すなわち、人口減少はより失業を減らせるという点で、ボーナスなのだ。

(当然ながら、新たな業務に取り組むことや、一人当たりの業務を減らすことなどがあるので、その分すべてが失業率に結びつく訳ではないが。)

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安倍首相は「人口減少はボーナス」と説明した同じ講演で、「世界最速級のスピードで永住権を獲得できる国になる」とも言っている。また、1億総活躍社会を目指し、働く人を増やそうとしている。これらの「働く人を増やすこと」(労働供給)は、人口減少ボーナスにはつながらず、失業者が増えることにつながる。政府主導で弁護士資格を増やして辯護士の失業者が増えたような過去の失敗は繰り返さないように、まずは1億総活躍社会などの「労働の供給」を増やすのではなく、仕事そのもの(GDPを600兆円に増やすためにも公共事業などの「労働の需要」を増やすことに取り組んでほしい。 

 

 (参考)