中二病とその根元
〇中二病とは、14歳前後で発症することが多い「自分を特別視」する思春期特有の思想・行動・価値観と定義されている。この病態はどこの国でもいつの時代でも存在するものであり、大きくなるにつれ、自分が特別な訳はないと考える人と自分が特別(な資質がある)と考える人に分かれていく。この「自分(および置かれた環境)が特別」なのか、違うのかそれとも同じなのかというこの根元的な疑問について昔から人は答を求めてきた。
〇「人間の存在する宇宙が特別なのか」という問いに対して、物理学では宇宙は特別という結論だ。自然法則とその中に現れる物理定数が求められている値とごくわずかでも異なる値であれば、人間のような知的生命はなかったであろうと推測されている(ウィキペディア)。その宇宙の特別さについて、神の意思以外に説明が難しいが、科学的には神の存在は証明困難だ。そのため、科学者は「もっと他にも宇宙があるんではないか」と考えた。それが「多元宇宙論」である。0.0000・・・0001%の確率で今の宇宙が生まれたとしても、他にも1000・・・00000もの別の宇宙があるのであれば、今の宇宙を(確率的に)説明できるということだ(そうでなければ神が存在するということになり科学的にはその存在を証明が必要になるのだ)。
〇「人間の存在する地球が特別なのか」という問いに対して、科学者は答を探しているが、他にも地球に似た星があり地球外生命体はいるという認識(地球は特別ではないという認識)だ。1973年に打ち上げた無人宇宙探査機「パイオニア11号」や1977年に打ち上げた無人宇宙探査機「ボイジャー1号 」には、地球外生命体が同機を発見してくれる事を期待して、人類の情報を乗せた。1961年にアメリカの天文学者であるフランク・ドレイクによって考案された方程式では、前提により大きく異なるが「我々の銀河系に存在し人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数」は0~1000。地球上からでも地球外の文明を探そうというプロジェクトもある。SETIと呼ばれるプロジェクトで、電波望遠鏡で受信した電波を解析し、地球外知的生命から発せられたものがないか探すというものだ。
〇「人間は他の生物に比べてどうか」に対しては文明の有無という点で他の生物とは明らかに異なる(特別)という認識だ。ただし、ハンバーグを見て、そして自分の犬を見て、その違いが理解できなかったから、ベジタリアンになったという人もいる。ミュージシャンのSEKAI NO OWARIの「虹色の戦争」という曲は、虫と人間の違いについて問いかけるものだ。
虹色の戦争 - SEKAI NO OWARI - 歌詞 : 歌ネット
〇「民族や人種の優劣はあるか」という問いはタブーだ。過去に自分の民族・人種が優れているとして、戦争や差別など悲劇が繰り返されてきた。
〇「自国民が他国に比べて優位な点がある(特別である)」と認識することは、国民に尊厳を持つという点から否定されるものではない。日本では、TV番組も含めて、日本が特別と感じている人が多くなっているのは前回のブログのとおり。日本を特別と感じている人(どちらかといえば右派)がいる一方で、日本は特別ではなく日本は劣っていると感じている人(どちらかといえば左派)も多くいる。どちらの意見も存在し、どちらかに意見が大きく偏れば、揺り戻しが生じてくる。
以 上
日本人による日本礼賛の理由
〇2016年、世界では英国のEU離脱やトランプ大統領誕生など、自国民最優先の考えが浸透してきた。日本でもすでに、2016年以前から、日本礼賛のTV番組や書籍が台頭してきている。
・ネット上での日本礼賛テンプレート
〇日本礼賛番組が増えた理由は次が考えられる。
(1)2012年頃まで成長率が高かった中国や韓国の綻びが見え、相対的に日本の良さを再認識したこと。(韓国に対する親近感は2012年で急低下、中国に対する親近感は低下傾向)。なお、民主党支持率はほぼ似たようなタイミングで低下している。
(2)グローバル化に伴う観光誘致を推進した結果、日本への観光客が増加し、その旅行者からの感想・称賛を認識したこと。
(3)グローバル化の一環としてのクールジャパン政策やTPPを推進していく中で、海外との競争に勝ち残っていくためには日本の強みを確認せざるを得なかったこと。
(4)これまで日本を礼賛する番組や書籍があまりなかったことから、目新しさや優越感から、視聴率上昇、書籍販売好調につながったこと。
〇真面目さ、勤勉さが取り柄の日本人にとって自画自賛はあまり似つかわしくはなく、礼賛番組を継続していくほどの目新しさを出していくのは難しいと考えるので、今後、日本人による日本ブームはある程度落ち着いていくものと考える。いずれにしても、日本人の意識調査では、「日本に生まれてよかった」と答えた割合は、調査開始の1973年以降、ずっと90%以上を維持しており、直近2013年の調査では97.3%まで上昇しているのだ。
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2014/pdf/004.pdf
キリギリスが尊敬される社会
〇以前に働く意識の重要性についてブログに書いた。言いたかったことは、働く目的が大事ということだ。「お金を稼ぐ」ことが目的になると、より効率的に働くこと、すなわち働く時間は少なければ少ないほど良い。ただし、「働くこと」自体が目的になれば、情熱をもって何時間でも働きたいと思う人もいるだろう。そういった仕事に邁進する人たちを決して軽蔑するような社会にはなってほしくない。アリとキリギリスの例だと、キリギリスが尊敬される社会にはなってほしくないということだ。
〇芸能界は労働としての効率は悪い(成功しない限り賃金は安い)のだと思う。需給の関係からすれば、初めの安い給料でも、芸能界に憧れる人は大勢いるから成り立っている。また、それは「働いて成功する」ことが目的となっているから、(最終的成功してお金を稼ぐのが目的なのかもしれないが)最初の低い賃金でも本人的には許容されるとも言える(当然ながら本人の意向を無視した過酷な労働は駄目であるが)。
〇昨年11月に中国は大型ロケット長征5号の打ち上げに成功した。長征5号には2百以上の独自新技術が使われた中国新技術の塊とのことであり、燃料層壁の接合の問題などさまざまな技術的困難を乗り越えて打ち上げ成功に至ったとのことだ。下の写真にあるが、若い人が情熱を持って寝る間を惜しんで仕事してきた雰囲気が伝わってくる。昔のトヨタやホンダの開発風景に似ているのだろう。
〇一方で、日本は 2017年1月のロケットの 打ち上げに失敗した。世界で2017年の打上げ失敗は今のところ日本だけだ(2016年は米国1機のみ)。技術力が高いと言われている日本の開発見直しなどもニュースになっている(MRJ)。携わっている人たちはしっかりと情熱を持ってくれていると思うが、周りがしっかりとサポートする状況になっているのだろうか。
ミニロケット打ち上げ失敗、「20秒までは正常」 :日本経済新聞
MRJ納入遅れ 量産も先送り | 2017/2/26(日) 10:36 - Yahoo!ニュース
〇長時間労働が強制されたのか自発的なのかの判断は難しい。そのため、一律的に長時間労働をやめされることで、これから日本は仕事しないことが評価されていく社会に変わっていくのかもしれない。当然、過酷な長時間労働は避けるべきである一方で、何かを創造するにはそれなりの労働も必要なのは事実である。仕事の種類にもよるのだろうが、政府は、情熱をもって働く人が疎外されない仕組み作りを目指してほしい。
「財政赤字」のススメ
〇昨年は「英国のEU離脱」や「トランプ新政権」等で、グローバル・自由化による格差社会の問題点が露呈、世界的にグローバル化からの方向転換を探りつつある状況だ。「グローバル化」により「移民により仕事が失われる」、「生産拠点を海外に移転することで仕事が減る」ということだ。一方で、米国内の仕事が減少してきた大きな理由は「オートメーション化等の業務の効率化」も大きい。世界が変化してきているのは、「グローバル化」というよりも効率化も含めた「仕事の減少」が理由なのだろう。
〇前に書いたとおり、「仕事の効率性を向上させる」=「仕事を減らす」=「職がなくなる」ということだ。グローバル化とは「世界的に業務を効率化すること」なので、仕事は減っていくことになる(当然、新しい仕事も増えたが、トータルでは大きく仕事量は減少している)。反対に「非効率化」が進めば、仕事は増える。トランプ政権が掲げている「保護貿易主義」は「世界的な非効率化が進む」=「仕事が増える」ということだ。
〇「非効率化はムダが多い」ということであり無駄が多い程、効率的にするよりも余分な仕事が増えるのは当たり前だ。それが労働者にとっては、「仕事がある」ということで望ましいことだ。グローバル化・効率化は消費者にとって望ましい一方で、仕事が減るという面では労働者にとって問題となる。この労働者の側面をないがしろにしてきたことで現在の英国のEU離脱・米国トランプ政権につながっているのではないか?
〇当然ながら、これまで過去にも、技術革新や効率化でなくなった仕事もある。仕事があるないかは失業率で見れるが、過去には各国で失業率が大きく上昇したこともある。失業率が上昇すればその国の政権を不安定にさせるので減税・公共事業で賄うなどで当時の政府は対応し、財政状況を悪化させてきた。現在はその教訓を踏まえて財政健全化を目標にしてしまった結果、失業率の上昇や景気悪化に手が打てなくなった。
〇今後もさらにフィンテック・AI等で効率化が進み「仕事の減少」につながる可能性があり、労働者は仕事減少の不安を募らせる。そして一番重要なのは、労働者は消費者であり、また、労働者心理の不安は消費者心理の不安につながり消費が進まないのだ。
〇労働者の不安感を取り除くには、例えば、国が「公共事業等で仕事を必ず確保します」というメッセージを打ち出せば不安感が取り除かれ景気好転に繋がるのではないだろうか。
なお、財政赤字は、モノづくりができる現状では全く問題ない。財政赤字=円安になって輸出も増加する。ただし、トランプ氏がいうように、輸出の大幅な増加は、海外の雇用を奪う面もあるため、注意が必要だ(日本としては、あまり輸出はせずに、各国の産業育成が重要だと思う。)。また、シャープ、東芝のような企業が続いて自国でモノづくりができなくなれば、輸入に頼らざるを得ないので、財政赤字が大きな問題となってしまう。そのための産業保護の投資も重要なのだ。
トランプ勝利の本質
〇人間には「もっと知りたい」(知)と「もっと欲しい」(財)という欲求がある。それらの欲求は次の「技術進歩・効率化」と「財の偏り」につながる。「小さな政府」で貧富の差が拡大するのは、この財の偏りが進むということで、「大きな政府」ではこの偏りを富の再分配で是正する。
①技術は進歩し、効率は加速して進む。(知の継承)
⇒ 技術革新は進む。グローバル化も効率化に伴うもの。
②自由であれば、持つものはより多く持つようになる。(財の継承)
⇒ 貧富の格差が拡大
〇現在は世界的に「小さな政府」を志向している(グローバリゼーション)。18世紀のアダムスミスの唱える小さな政府(自由放任主義)では、貧富の拡大や経済変動のブレ(恐慌)が問題となり、ケインズの唱える大きな政府(福祉国家)に転換。20世紀には、大きな政府には「財政赤字拡大」などの課題があったことから、「小さな政府」(古典的自由主義)に回帰していた。これをトランプ勝利で大きな政府を志向していくということだ。
したたかな富裕層
〇アメリカ大統領選挙でトランプ候補が支持を集めているが、この大きな理由は格差問題によるものだ。移民問題も格差問題から来ているものだ。
〇この格差問題は小さな政府を志向しているためだ。小さな政府は格差を拡大する(富裕層と貧困層が断絶)。グローバル化も小さな政府が目的だ。
〇日本でもグローバル化が推奨されている。最近の日本での富裕層にお金を集める仕組み(日本版トリクルダウン)は次のとおり。
〇格差を図る指標としてはジニ係数がある。ジニ係数が高いほど所得分配が不平等。
資料:GLOBAL NOTE 出典:OECD
〇収入も格差要因だが、富裕層と貧困層を断絶する大きな要因には教育問題もある。富裕層が教育が受けられる割合が高いほど格差が広がる。米国では、「小さな政府」進行の結果、教育費の高騰が問題になっている。高学歴者は富裕層が多数を占め、大企業やマスコミ、政府、大学に就職し、「グローバル化」などの飾られた言葉で、学者による提唱、マスコミの賛美、政府による実施など富裕層に有利な政策を行っていく。そうすることで富裕層コミュニティをさらに強固にしていくのだ。
〇日本でも富裕層ほど子供の学力が高い傾向にある。
〇格差を図る指標はジニ係数だけでなく、大学生の家庭の収入の分布で図るべきだ。仮に大きな偏りがある場合(収入の高い家庭の割合が大きい場合)は、格差が進んでいるとして、消費税減税、相続税増税、累進課税推進などの格差是正政策(所得再分配推進)を行っていくべきだろう。
金融政策の限界
〇もともと金融政策が限界なのは明らかだった。
〇日本は他の国に比べて、デフレの年季が違う。頑強、強固なデフレだ。節約術、クーポン、割引が世間に溢れているがこれは、デフレを進行させ、景気には逆効果だ(節約されて日本全体で買われる量が増えれば別だが)。消費者物価上昇率も過去から基本的にマイナス。
資料:GLOBAL NOTE 出典:OECD
〇2014年に物価が上昇したが、価格を上げた会社の業績は失速(商品が売れなくなって)。2015年の物価は低下。(ユニクロの失速は2度の値上げによるもの。)
〇日銀の責務は、物価安定だ。物価が下がり続けている現状では、インフレ目標を設定することは望ましい。ただ、物価上昇は景気回復が前提だ。景気回復によりモノを買う人(需要)が増えるからモノの価格が上がるのであって、景気回復のためにはまずはモノを買う側である家計にお金が届くことだ。
〇金融政策は家計にお金が届くという意味で効果が薄い。すなわち、金融政策は家計に「お金を貸す」(①)ことであり返していく必要があるが、財政政策は基本的にお金を返す必要がない。すなわち、財政政策は「給料で払う」(②)、「タダで渡す」(③)であり金融政策よりも景気回復効果が高い。(効果は①<②<③)
〇日銀総裁が財政政策との協調を重視する姿勢を示すなど、財政政策の必要性が少しずつコンセンサスになりつつある。今後、効果的な財政政策が実行されることを希望する。(一番効果的なのは家計に「タダで渡す」減税・手当、次に「給料で渡す」公共事業だが。)