日本経済新聞社を訴えたい
〇先日の日本経済新聞に、経団連会長がプライマリーバランス黒字化は日本経済の国際的信認を高めるためにも重要と発言したとの記事が掲載された。すなわち、税収等収入の範囲内に財政支出を抑えるべき、ということだ。
〇なぜ、大企業は財政出動に反対するのだろうか(財政赤字は円価値低下・インフレ進行するだけ)。これまで、大企業・富裕層はグローバル化・自由化・効率化を推進することによって、富を獲得し格差を拡大してきた。大企業は基本的に自由競争に晒されており、強いものが生き残る弱肉強食である。その自由競争の下では強いものは更に強くなる。大都会はどんどん効率化し、地方は徐々に寂れていく。財政出動する場合、都会は優先的に整備されているため、地方への支出は多くなることから所得再配分的な要素があるため、大企業からすればなぜ将来性のない地方、利益獲得の努力をしていない地方に投資するのか疑問であり反対ということだろう。
〇大企業・富裕層は下の図の左のイコーリティ(公平性)、いわゆる公平な自由競争を目指している。(下の段ボールが、財政出動である。また、左の段ボールは消費税の基本的な考え方でもある。)
〇また、富裕層・大企業からすれば、自身の持っているお金の価値の低下に繋がる財政出動は避けてほしいのだ。財政出動するほど、円の信任が低下し、円の価値が下がる(すなわち相対的にモノの価値が上がりインフレが進行する)。大企業・富裕層は、プライマリーバランスを守れと言いながら、自分では税金を払わず(法人税減税、なお次回消費増税時の軽減税では新聞も対象になっている)、庶民に払わせ(消費税増税)、庶民への支出(財政出動)には反対している。そこで得た利益で富裕層への株主配当を支払い(スチュワードシップコード)、財政出動に反対することで自分たちの獲得利益・株主配当の価値を維持しているのだ。(富裕層が得をする逆のトリクルダウン(格差拡大))
〇昨年度の流れであった英国のブレグジットやトランプ大統領誕生は、グローバル化・効率化に伴う格差拡大から来たものだ。この解消には、大きな政府が必要であり、消費税減税や財政出動などの対策が必要だ。足元(ロンドン、ドイツ)でも反グローバル化の要求は高まっており、世界的な流れは、反グローバル化、反緊縮財政なのだ。
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〇先日の九州豪雨では多くの方が犠牲となった。今回氾濫した赤谷川や桂川は九州最大の筑後川の支流であり、5年前にも氾濫。それから削れた護岸を直し、川底の土砂も取り除いたものの、川幅拡張などの増強工事は見送っている。軽々しくは言えないが、もし(プライマリーバランス黒字化目標がなく)緊縮財政でなければ増強工事が行われ、被害は回避できた可能性がある。また、その他にも個人用のシェルターなど工夫の余地はなかったのか、今回の被害回避のために事前に財政出動しておくことはできなかったのか。
〇富裕層・大企業の既得権的なプライマリーバランス黒字化は即時にやめるべきだ。また、富裕層・大企業のことしか考えておらず日本経済のことを考えていない日本経済新聞社は、大企業経済新聞と名前を変えてほしい。心からそう思うのだ。
財政政策は人の為ならず
〇6月8日のイギリス総選挙で、メイ首相率いる与党・保守党は、議席数を12議席減らし過半数割れとなった。メイ首相は就任当初から「2020年まで総選挙は実施しない」と発言していたが、「ブレグジット」を円滑に進めるため、4月の保守党支持率が高い状態を受けて、総選挙の前倒しを決定していた結果だ。
〇敗因は、1つは相次ぐテロ(5月マンチェスター、6月ロンドン)を防げなかったこと、1つは緊縮財政だ。5月18日に発表された保守党のマニフェストでは、高齢者の在宅介護の自己負担額の引き上げ等を掲げて国民の反発を受けた。対する労働党はマニフェストで、国営の医療制度の拡充や教育予算の増額を盛り込み、支持を広げていた。
〇昨年度の流れであった英国のブレグジットやトランプ大統領誕生は、本質的には移民による治安の問題ではなく、労働者の仕事減少・収入減少に対する不安から来たものと考えている。移民に加えて、AIに象徴されるテクノロジー進展やスマホアプリによる既存サービスの駆逐などによる仕事の減少・収入の減少を国民は心配しているのだ。この流れを踏まえれば、メイ首相は、規制緩和とは逆のポピュリズム政策である財政政策を打ち出す必要があった。
〇 なお、EUの主要国であるドイツ、フランス、イギリスはリーマンショック以降、GDPが増加、移民人口は増加している。
・GDP成長率<資料:GLOBAL NOTE 出典:国連>
・移民人口<資料:GLOBAL NOTE 出典:世銀>
〇日本でも規制強化の流れはある。この6月1日から酒税法改正で安売りが規制された。小売店を潰さない(労働者を守る)規制強化だ。2006年の酒販免許の完全自由化という規制緩和が競争激化につながったのだ。 多くの施策に関し、労働者と消費者の利益は相反する。デフレが継続し競争過多となった結果、消費者がこれまでも、そしてこれからも多大な恩恵を受けている。今後は労働者のための規制強化を行いバランスをとる必要があるというのが国際的な流れだ。
アルコール市場動向―酒販免許規制緩和の行方 | インテージ 調査レポート ライブラリ
〇当然ながら消費者のための規制緩和も重要だ。行き過ぎた規制強化は消費者の損失が大きくなる。双方を考慮してバランスを考えることが重要だ。どちらが望ましいのかは個別施策ごとに判断する必要があるが、全体としては、現時点のデフレ下では競争過多なので規制強化が必要ということだ。
〇マスコミからは、財政政策はバラマキとして批判される。マスコミは「情けは人の為ならず」を「結局その人の為にならない(ので、すべきではない)」という意味で使っているように見える。しかし、「情けは人の為ならず」は「情けは、いずれ巡り巡って自分に恩恵が返ってくるのだから、誰にでも親切にせよ」という意味だ。財政政策も同じく、仕事を与えることで、もらったその給与を別に使うことで景気が良くなってくる、いわゆる「金は天下の回りもの」だ(バラマキをするのは、一義的には必要な投資が民間でできないことからだが、自国産業維持や景気下支えの面がある)。ただ、過剰になればインフレや供給過多などの副作用はある。要はバランスなのだ。
〇規制を強化を進めても、スマホ・AIの進展により、仕事減少(効率化が進むので商品価格は下落)が更に進むと予想される。フリマアプリのフリルはCMで「販売手数料はばかばかしい」と言っている。メルカリを始めとしたフリマアプリは人気となり、これまで流通していなかった中古品が流通するという効果はあると思うが、ブックオフなどの既存の中古商品の流通業者は大きなダメージを受けている(中古商品にかかる仕事が激減)。また、それ以外にも様々な業界がスマホ・AIで破壊されており、今後もますます加速していくだろう。その方向性には逆らえないが、消費者の逸失利益とバランスをとりつつ、 更なる労働者のための規制強化を検討していく必要があると思うのだ。
消費者と生産者
〇日本では、デフレが継続しているが、物価下落は消費者にとって望ましいものだ。これまで進めてきた規制緩和(競争促進)や企業の効率化、グローバル化(国際分業)、テクノロジーの発展(自動化やインターネットなど)よる影響だ。ただし、デフレは仕事が減る方向なので、仕事を求める労働者にとっては逆風だ。そして基本的には労働者は、消費者なのだ。
〇規制緩和は基本的に消費者のためのものだ。規制は一般的に労働者を守るために作られたものも多く、当然ながら、規制がなければ消費者が恩恵を受けるものは多い。「後出しじゃんけん企業」の方が最新技術や前例も知っているので当然優位であり、安い料金で商品を提供できるだろう。規制は、既得権益の保護と批判されるが、(いわゆるレガシーと言われることもある)労働者を守っている面もあるのだ。その規制がなければ、多くの失業者が出るが、その分、消費者には相応の負担を負ってもらっている(労働者に多めに支払っている)ということだ。
〇また、規制緩和は、経済成長の即効薬ではない。規制緩和の代表的な施策であるTPPは、(日本では)消費者が何兆円もの恩恵を受けるが、それは基本的に海外から安くモノを購入できるからだ。消費者は安く買えた残り分を消費に回せればGDPが維持できる可能性もあるが、多くが貯蓄に回れば消費が減るのでGDPは減少となる可能性は高い。日本から海外への輸出効果もあるが人件費の関係で輸入分の恩恵の方が大きい(付加価値の高い商品に関しては日本優位だが、景気が悪くなると途端に買われなくなるため、安定性は低い。なお、GDP減少は、消費の減少+輸入の増加-輸出の増加となる。)
〇もしデフレを進めたくないのであれば、規制緩和はやめるべきだ。英国のEU離脱やトランプ大統領誕生は、本質的には移民の問題ではなく労働者の仕事の減少と考えている。世界的には、アマゾンやグーグル、アップルなどの巨大企業は、恐ろしいスピードでテクノロジーを進めており、将来の仕事が大幅に減少する可能性は高く、規制緩和等がなくても商品価格は大きく低下していくだろう。米国抜きTPPを推進している日本は、労働者目線への移行という国際的な流れに逆行押しているのだ。なあお、日本は、欧米各国に比べて、グローバル化を進めず(輸出入の割合が相対的に小さい)、また、財政政策(財政赤字。)を進めており、相対的に労働者目線にとって望ましいものとなっており、欧米各国は日本モデルを目指していると言える。
☟今は日本はコチラを重視
消費者目線 | 労働者目線 |
自由化、グローバル化 | 保護主義、自国産業重視 |
規制緩和推進 | 金融政策・財政政策推進 |
アダムスミス | ケインズ |
古典的新自由主義 | 修正資本主義 |
失業率上昇 | 失業率低下 |
モノの価値が下がる | モノの価値が上がる |
おカネの価値が上がる | おカネの価値が下がる |
デフレ | インフレ |
〇消費者目線なのか労働者目線なのかは、GDPとインフレ率と失業率で一般的には判断できる(失業率も所得格差などを見る必要はあるが)。GDPが減少している中、デフレ( 消費者目線により過ぎている)であれば、 競争過多、分業過多、効率化過多なので、労働者目線へ(保護主義、財政政策等)移していく必要がある。労働者目線の施策実施は、自国産業の育成・保護につながっていく。逆に、インフレ率が上昇してきた場合は規制緩和が有効など、要はバランスなのだ。これは、GDPが、生産面から見た1年間の付加価値(生産額)の合計であるとともに、消費額および分配額が等しくなる三面等価の原則があり、消費者だけではなく、労働者面もどちらも重要ということからも分かる。余談であるが、自国産業が維持されている中での財政赤字は全く問題ない。もっと財政赤字を進めても通貨下落になれば輸出増加で稼げる。
〇GDPを継続して生じさせる源は、自国産業(労働力)と自国資源だ。ベネズエラでは今、ハイパーインフレになっている。要因は、チャベス前大統領による外資企業(資本・技術)の追い出し、貧困層へのバラマキに加えて、原油価格の減少(ベネズエラ)によると言われている。しかし、本質的には、自国産業を育成できなかったことが原因だ。バラマキ(財政政策)が悪いのではなく、バラマキは自国産業育成のための時間稼ぎに過ぎない(バラマキがなければ、もっと悲惨な状況となる)。過去の各国のハイパーインフレも自国産業が育っていれば、発生は防げた。
〇戦後のドイツのハイパーインフレは、戦争による自国産業の崩壊に加えて自国資源(ルール地方)の喪失の中、多額の賠償金支払いが必要だったことである。ロシアのハイパーインフレも、社会主義の下で働くモチベーションの低下による自国産業の衰退だ。ジンバブエのハイパーインフレもベネズエラと同じ。アルゼンチンのハイパーインフレも工業化の失敗だ。
〇なお、グローバル化の名の下に国際分業が推進されているが、輸出増加は、輸出先の国の産業を破壊していることにもなるので、その点注意が必要だ。(各国は何かの産業に特化して、それ以外の産業をやめていくことになる(効率化))。仮に、円下落で日本の開発途上国に対して輸出が大きくなりすぎれば、日本に対する税金を上げてもらうよう要請していく必要がある。その方が長期的には日本にメリットになると思うのだ。)
SSCからFDの流れ
〇現在、政府が進めているスチュワードシップ・コード(SSC)の根本にある思想は、「しっかり儲けて株主に配当を払え」という株主目線、利益重視の考え方だ。
「スチュワードシップ・コードの制定は、機関投資家を「物言う株主」に変えて投資先企業の経営監視機能を強化することで、企業の持続的成長や株主への還元を後押しするねらいがある。」
〇企業の役割(広義の利益の分配)は、基本的に4つだ。
・消費者により良い商品を安く届けること
・従業員にしっかりと給与を払うこと
・会社が、より良い商品のための新規投資やそのための内部留保を行うこと
・株主に配当を還元すること
〇 アベノミクスで賃上げを推奨していることや人手不足から、従業員給与の引き下げは現時点では困難だ。また、「画期的な商品を作る」「業務効率を上げる」という手段もあるが、すぐにできるものではない。その状況で、SSC(スチュワードシップコード)が推進されれば、利益を上げようとして、商品の価格を上げる(消費者利益の棄損)、もしくは、原価を下げる(質の悪い商品を提供する)ことになる。金融庁はそれを恐れて、フィデューシャリーデューティー(FD)を最近、急に推進してきたのではないか?(なお、FDとは、受託者責任ということだが、簡単に言えば、顧客利益優先ということだ。)
金融庁のいうフィデューシャリー・デューティーとは何か|森本紀行はこう見る|機関投資家・資産運用業界向け資産運用総合情報サイト【fromHC】
〇すなわち、企業は、顧客優先で商品の質を高めて・価格も引き下げて、従業員の賃上げをして、利益も上げろ、と金融庁から言われているのだ。(デフレで消費者の立場が強く、グローバリズムで株主が強い。割を食っているのは企業なのだろう。)
〇 直接的に関係ないかもしれないが、原価を下げるという点に関係して、文化財などは、(SSCでいう利益を生み出すものではないとの認識から、)費用(原価)は削減されがち(質が低下しがち)と考える。最近、日光東照宮でしっかりとした修復ができていないのではないか、という点がネットで話題になった。こういったことも、利益至上主義(スチュワードシップコード)の弊害ではないか?
・上が修復前、下が修復後だ。確かに、顔の凹凸と目の位置や、鼻の穴の角度など、修復前に比べてレベルが落ちているように感じられる。(修復を担った人はしっかり修復していただいたと考えるが、時間や費用などをもう少しかける必要はなかったのかについて、前回の修復と比較して検証する必要がある。)
日光東照宮の修復がひどいと話題に - Togetterまとめ
(参考)韓国でも、南大門の修復時に、その修復状態が良くないと問題になった。
かつての日本は美しかった:【「国宝第1号」 崇礼門(通称:南大門) 修復?】
・上が修復前、下が修復後。
〇基本的には、修復にどの程度コストをかけるのかという意識の問題なのだと思う。修復の重要性は、利益では図れないのだろう。
日本の殺人発生率
〇千葉県我孫子市でベトナム国籍のレェ・リンさんが殺害された事件で、日本人が逮捕された。「日本は安全な国だと思っていたのでショックで、悲しい」との声もあった。
〇大変、痛ましい事件であった。日本は本当に殺人発生率が他国に比べて低いのだろうか?年次推移の各国の殺人発生率を比較してみた。
【 資料:GLOBAL NOTE 出典:UNODC 】
http://www.globalnote.jp/post-1697.html
〇結果として、統計上、日本の殺人発生率は、南アフリカの約1/100、米国の約1/10と大幅に低かった。また、日本の殺人のうち、組織犯罪(マフィア、暴力団等)の占める割合は約20%、また、家族による殺人は40~50%とのことだ。そのため、年間300~400人が他殺でなくなっているが、組織犯罪ではななく、また、家族でもない人からの他殺人数は、年間100~200人と推定される。
犠牲者多数の主な事件
1938年5月 | 岡山県の集落で男が猟銃や日本刀で村民らを襲撃。30人が死亡したとされる津山事件。溝口正史の推理小説「八つ墓村」のモデルになった |
1948年1月 | 東京都豊島区の帝国銀行支店で、毒物を飲まされた行員ら12人が死亡(帝銀事件) |
1971~72年 | 連合赤軍が群馬県などのアジトで仲間をリンチし12人死亡 |
1995年3月 | オウム真理教信者らが、東京都心の地下鉄で猛毒のサリンをまき13人死亡 |
2001年6月 | 大阪府池田市の小学校に侵入した男が包丁で児童8人を刺殺 |
2004年8月 | 兵庫県加古川市で、無職男が隣人ら7人を刺殺 |
2004年9月 | 福岡県大牟田市で、元力士兄弟の一家4人が知人女性の家族ら4人を殺害 |
2005年2月 | 岐阜県中津川市で市職員の男が親族5人を殺害 |
2008年6月 | 東京・秋葉原で、派遣社員の男が通行人に切り付けるなどし、7人死亡 |
2008年10月 | 大坂・難波で、無職男が個室ビデオ店に放火、16人が死亡 |
2009年7月 | 大阪市のパチンコ店で男がガソリンをまき放火。客ら5人が死亡 |
2013年7月 | 山口県周南市で5人が頭部を殴られ死亡。近くに住む男を逮捕 |
2015年3月 | 兵庫県洲本市の住宅で男女5人が刺殺され、近所の男を逮捕 |
2015年9月 | 埼玉県熊谷市の住宅3軒で、住民の男女6人が殺害された。殺人などの疑いでペルー人の男を逮捕 |
2016年7月 | 相模原市緑区にある知的障害者らが入る施設で19人が殺害された。障害者は安楽死させた方がよいと計画的犯行に及んだ元施設職員の男を逮捕 |
〇日本は相対的に殺人発生率は他国に比べて低い。ただし、家族同士の殺人を除けば全国で2~3日に1回は殺人が起きていることになる。そういったリスクがあるということは十分理解しておくべきなのだ。
中二病とその根元
〇中二病とは、14歳前後で発症することが多い「自分を特別視」する思春期特有の思想・行動・価値観と定義されている。この病態はどこの国でもいつの時代でも存在するものであり、大きくなるにつれ、自分が特別な訳はないと考える人と自分が特別(な資質がある)と考える人に分かれていく。この「自分(および置かれた環境)が特別」なのか、違うのかそれとも同じなのかというこの根元的な疑問について昔から人は答を求めてきた。
〇「人間の存在する宇宙が特別なのか」という問いに対して、物理学では宇宙は特別という結論だ。自然法則とその中に現れる物理定数が求められている値とごくわずかでも異なる値であれば、人間のような知的生命はなかったであろうと推測されている(ウィキペディア)。その宇宙の特別さについて、神の意思以外に説明が難しいが、科学的には神の存在は証明困難だ。そのため、科学者は「もっと他にも宇宙があるんではないか」と考えた。それが「多元宇宙論」である。0.0000・・・0001%の確率で今の宇宙が生まれたとしても、他にも1000・・・00000もの別の宇宙があるのであれば、今の宇宙を(確率的に)説明できるということだ(そうでなければ神が存在するということになり科学的にはその存在を証明が必要になるのだ)。
〇「人間の存在する地球が特別なのか」という問いに対して、科学者は答を探しているが、他にも地球に似た星があり地球外生命体はいるという認識(地球は特別ではないという認識)だ。1973年に打ち上げた無人宇宙探査機「パイオニア11号」や1977年に打ち上げた無人宇宙探査機「ボイジャー1号 」には、地球外生命体が同機を発見してくれる事を期待して、人類の情報を乗せた。1961年にアメリカの天文学者であるフランク・ドレイクによって考案された方程式では、前提により大きく異なるが「我々の銀河系に存在し人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数」は0~1000。地球上からでも地球外の文明を探そうというプロジェクトもある。SETIと呼ばれるプロジェクトで、電波望遠鏡で受信した電波を解析し、地球外知的生命から発せられたものがないか探すというものだ。
〇「人間は他の生物に比べてどうか」に対しては文明の有無という点で他の生物とは明らかに異なる(特別)という認識だ。ただし、ハンバーグを見て、そして自分の犬を見て、その違いが理解できなかったから、ベジタリアンになったという人もいる。ミュージシャンのSEKAI NO OWARIの「虹色の戦争」という曲は、虫と人間の違いについて問いかけるものだ。
虹色の戦争 - SEKAI NO OWARI - 歌詞 : 歌ネット
〇「民族や人種の優劣はあるか」という問いはタブーだ。過去に自分の民族・人種が優れているとして、戦争や差別など悲劇が繰り返されてきた。
〇「自国民が他国に比べて優位な点がある(特別である)」と認識することは、国民に尊厳を持つという点から否定されるものではない。日本では、TV番組も含めて、日本が特別と感じている人が多くなっているのは前回のブログのとおり。日本を特別と感じている人(どちらかといえば右派)がいる一方で、日本は特別ではなく日本は劣っていると感じている人(どちらかといえば左派)も多くいる。どちらの意見も存在し、どちらかに意見が大きく偏れば、揺り戻しが生じてくる。
以 上
日本人による日本礼賛の理由
〇2016年、世界では英国のEU離脱やトランプ大統領誕生など、自国民最優先の考えが浸透してきた。日本でもすでに、2016年以前から、日本礼賛のTV番組や書籍が台頭してきている。
・ネット上での日本礼賛テンプレート
〇日本礼賛番組が増えた理由は次が考えられる。
(1)2012年頃まで成長率が高かった中国や韓国の綻びが見え、相対的に日本の良さを再認識したこと。(韓国に対する親近感は2012年で急低下、中国に対する親近感は低下傾向)。なお、民主党支持率はほぼ似たようなタイミングで低下している。
(2)グローバル化に伴う観光誘致を推進した結果、日本への観光客が増加し、その旅行者からの感想・称賛を認識したこと。
(3)グローバル化の一環としてのクールジャパン政策やTPPを推進していく中で、海外との競争に勝ち残っていくためには日本の強みを確認せざるを得なかったこと。
(4)これまで日本を礼賛する番組や書籍があまりなかったことから、目新しさや優越感から、視聴率上昇、書籍販売好調につながったこと。
〇真面目さ、勤勉さが取り柄の日本人にとって自画自賛はあまり似つかわしくはなく、礼賛番組を継続していくほどの目新しさを出していくのは難しいと考えるので、今後、日本人による日本ブームはある程度落ち着いていくものと考える。いずれにしても、日本人の意識調査では、「日本に生まれてよかった」と答えた割合は、調査開始の1973年以降、ずっと90%以上を維持しており、直近2013年の調査では97.3%まで上昇しているのだ。
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2014/pdf/004.pdf