新婚さんいらっしゃい!(数学雑記)

袋の中に当りが1つ入った合計10個のくじを10人の人で順番に引く(引いたら中に戻さない)とする。誰も引く前は、何番目に引こうが当たる確率は1/10。ただし、一人目の人がはずれれば次の人の当たる確率は1/9に上がり、一人目の人が当たれば次の人の当たる確率はゼロとなる。

伝説の入試問題(数学)@受験の月(最後の「早稲田大学トランプの確率」参照

 

くじの当たる確率は、引く順序には関係ないのは、全員がくじを引く前の話だ。実際に誰かがくじを引いていけば確率は変化(収束)していく。くじを引く行為によって確率が収束していくようすは、「シュレーディンガーの猫」で、観測者が箱を開けて観測を行った瞬間、その猫の状態群が一つの状態に収束する状況(波動関数の収縮)にも似ていると思う。なお、波動関数の収縮がいつ、どのようにして起きるかは現在でも未解決の問題。

シュレーディンガーの猫 - Wikipedia

 

1990年に話題になったモンティ・ホール問題も、確率が変化(収束)していく問題だ。(詳しくは、 モンティ・ホール問題 - Wikipedia )

日本の長寿番組である「新婚さんいらっしゃい!」でも最近は番組を盛り上げるため、似たようなことを行っている。2組の新婚カップルは、「たこやき」「たわし」「海外旅行」「10万円」(の印)が中に入った4つの箱のうち一つを選び、その中身がカップルの商品となるというもの。新婚カップルが箱の中身を開く前に、山瀬まみちゃんが選んでない箱のうち「はずれ」の箱を開いて見せて、番組を盛り上げる(その他いろんなバリエーションはあるが)。その時、カップルの当たる確率は変化するのだろうか。

 

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上記の図では「海外旅行」・「10万円」を「あたり」、「たこやき」・「たわし」を「はずれ」とした。まみちゃんは3つ目か4つ目の箱のうちのどちらかのはずれを見せるので、どちらのカップルも外れる可能性がなくなり、当たる確率は3/5に上がる。(モンティホール問題で最初に選んだ箱が当たる確率が変わらないのは、司会者が箱を開けても可能性のなくなるケースがないため。)

 

3/5に確率が上がったとは言え、すでに新婚カップルは既にくじをひいているので、結果は決まっている。すなわち、真の確率はすでにあたり(またははずれ)として収束済であり、結果を見ていないだけだ。この事実が確率が変わっていくことに違和感を感じさせるのだ。

 

なお、モンティホールのように、まみちゃんが見せた後に、カップルは選ぶ箱を変えて良いのであれば、カップルが選ばなかった箱を選ぶと当たる確率は4/5に高まる。そのようにすれば番組はより盛り上がるかもしれない。金銭に対する欲望は誰でも持っていて、解答者が自分の解答で賞金が獲得できるか悩む姿に自分を重ね視聴者は共感する。クイズ$ミリオネア で「ファイナルアンサー」と問うのも同じだ。