消費者と生産者

 〇日本では、デフレが継続しているが、物価下落は消費者にとって望ましいものだ。これまで進めてきた規制緩和(競争促進)や企業の効率化グローバル化(国際分業)テクノロジーの発展(自動化やインターネットなど)よる影響だ。ただし、デフレは仕事が減る方向なので、仕事を求める労働者にとっては逆風だ。そして基本的には労働者は、消費者なのだ。

 

規制緩和は基本的に消費者のためのものだ。規制は一般的に労働者を守るために作られたものも多く、当然ながら、規制がなければ消費者が恩恵を受けるものは多い。「後出しじゃんけん企業」の方が最新技術や前例も知っているので当然優位であり、安い料金で商品を提供できるだろう規制は、既得権益の保護と批判されるが、(いわゆるレガシーと言われることもある)労働者を守っている面もあるのだ。その規制がなければ、多くの失業者が出るが、その分、消費者には相応の負担を負ってもらっている(労働者に多めに支払っている)ということだ。

 

〇また、規制緩和、経済成長の即効薬ではない。規制緩和の代表的な施策であるTPPは、(日本では)消費者が何兆円もの恩恵を受けるが、それは基本的に海外から安くモノを購入できるからだ。消費者は安く買えた残り分を消費に回せればGDPが維持できる可能性もあるが、多くが貯蓄に回れば消費が減るのでGDPは減少となる可能性は高い。日本から海外への輸出効果もあるが人件費の関係で輸入分の恩恵の方が大きい(付加価値の高い商品に関しては日本優位だが、景気が悪くなると途端に買われなくなるため、安定性は低い。なお、GDP減少は、消費の減少+輸入の増加-輸出の増加となる。)

 

〇もしデフレを進めたくないのであれば、規制緩和はやめるべきだ。英国のEU離脱やトランプ大統領誕生は、本質的には移民の問題ではなく労働者の仕事の減少と考えている。世界的には、アマゾンやグーグル、アップルなどの巨大企業は、恐ろしいスピードでテクノロジーを進めており、将来の仕事が大幅に減少する可能性は高く、規制緩和等がなくても商品価格は大きく低下していくだろう。米国抜きTPPを推進している日本は、労働者目線への移行という国際的な流れに逆行押しているのだ。なあお、日本は、欧米各国に比べて、グローバル化を進めず(輸出入の割合が相対的に小さい)、また、財政政策(財政赤字。)を進めており、相対的に労働者目線にとって望ましいものとなっており、欧米各国は日本モデルを目指していると言える

 

 

    ☟今は日本はコチラを重視

消費者目線 労働者目線
自由化、グローバル化 保護主義、自国産業重視
規制緩和推進 金融政策・財政政策推進
アダムスミス ケインズ
古典的新自由主義 修正資本主義
失業率上昇 失業率低下
モノの価値が下がる モノの価値が上がる
おカネの価値が上がる おカネの価値が下がる
デフレ インフレ

 

〇消費者目線なのか労働者目線なのかは、GDPとインフレ率と失業率で一般的には判断できる(失業率も所得格差などを見る必要はあるが)。GDPが減少している中デフレ( 消費者目線により過ぎている)であれば、 競争過多、分業過多、効率化過多なので、労働者目線へ保護主義、財政政策等移していく必要がある。労働者目線の施策実施は、自国産業の育成・保護につながっていく。逆に、インフレ率が上昇してきた場合は規制緩和が有効など、要はバランスなのだ。これは、GDPが、生産面から見た1年間の付加価値(生産額)の合計であるとともに、消費額および分配額が等しくなる三面等価の原則があり、消費者だけではなく、労働者面もどちらも重要ということからも分かる。余談であるが、自国産業が維持されている中での財政赤字は全く問題ない。もっと財政赤字を進めても通貨下落になれば輸出増加で稼げる。

三面等価の原則 - Wikipedia

  

GDPを継続して生じさせる源は、自国産業(労働力)と自国資源だ。ベネズエラでは今、ハイパーインフレになっている。要因は、チャベス前大統領による外資企業(資本・技術)の追い出し、貧困層へのバラマキに加えて、原油価格の減少(ベネズエラ)によると言われている。しかし、本質的には、自国産業を育成できなかったことが原因だ。バラマキ(財政政策)が悪いのではなく、バラマキは自国産業育成のための時間稼ぎに過ぎない(バラマキがなければ、もっと悲惨な状況となる)。過去の各国のハイパーインフレも自国産業が育っていれば、発生は防げた。

 

戦後のドイツのハイパーインフレ戦争による自国産業の崩壊に加えて自国資源(ルール地方)の喪失の中、多額の賠償金支払いが必要だったことである。ロシアのハイパーインフレも、社会主義の下で働くモチベーションの低下による自国産業の衰退だ。ジンバブエハイパーインフレベネズエラと同じ。アルゼンチンのハイパーインフレも工業化の失敗だ。


〇なお、グローバル化の名の下に国際分業が推進されているが輸出増加は、輸出先の国の産業を破壊していることにもなるので、その点注意が必要だ。(各国は何かの産業に特化して、それ以外の産業をやめていくことになる(効率化))。仮に、円下落で日本の開発途上国に対して輸出が大きくなりすぎれば、日本に対する税金を上げてもらうよう要請していく必要がある。その方が長期的には日本にメリットになると思うのだ。)