産まれる子供の男女比(出生性比)
〇出生性比とは、生まれた子の男子の女子に対する比率( = 年間の男子出生数 / 年間の女子出生数 (×100) )である。2009年までの日本の出生性比の年次推移は下のとおり。1968年から上昇しているが、おおよそ105を中心に104~106の範囲内と、男の子が女の子に対して5%(=105)ぐらい多い状況になっている。(死産も含めると107~108)。
〇この出生性比は、地域(各国)、時代にかかわらずおおむね105前後になっている。なぜなのだろう。
http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/17309.pdf
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/JOS-KJ00001562821.pdf?file_id=6736
〇ヒトの性別は、性染色体がXYで男性、XXで女性となる。その性染色体は、女性からの卵子(X)と男性からの精子(XまたはY)の受精によって決定するため、性の決定は精子に依存する。すなわち、Xを持つ精子が受精すれば女子、Yを持つ精子が受精すれば男子ということだ。ひとつの仮説としては、精子のなかでXよりもYを持つ精子の方が5%以上多いことが考えられる。(下の画像は男性の染色体。右下23番目の染色体がXYとなっている。)
〇精子が作られる際、男性の性染色体XYが減数分裂するため、XとYは同数となるはずだ。一方で、射精時の精子におけるYとXの比率は107:100という論文があった。
Sperm Sex Ratio (X: Y Ratio) - Google 検索
〇X染色体とY染色体とは何が違うのだろうか?見た目でわかるが、X染色体は1億6,300万塩基対、Y染色体は5,100万塩基対と大きさが相当異なる。また、Y染色体は、"TTCCA" の5塩基の反復が続くキナクリンという遺伝子のない不毛地帯があるため、X染色体は1,098の遺伝子がある一方で、Y染色体は78の遺伝子しか持っていない。まるでY染色体は、情報をそぎ落としているようだ。この大きさ(塩基対の量)や情報量の違いが、精子のXYの数の差につながっているのではないか?(下の画像のとおり、上のY染色体(男子因子)の方が下のX染色体(女子因子)よりも、短く情報量も少ない。)
〇多細胞生物の生体内では、内部に異常を起こした細胞のほとんどはアポトーシス(細胞の自殺)によって取り除かれる。これにより、ほとんどの腫瘍等の成長は未然に防がれている。精子ができるための減数分裂後も、良い子孫を残すため、ミスコピーなどを排除するための精子のアポトーシスが行われている可能性がある。通常の細胞分裂と異なり、減数分裂時にはXとYで分かれるため、長さ・情報量が異なることから、アポトーシスの割合が異なった結果、Yが多くなっているのではないか?つまり、Xの方が情報量が多く長いので、その分ミスコピーが起こりやすくアポトーシスの割合が高いのではないか?
〇X染色体を含む精子とY染色体を含む精子で、遺伝子数と塩基対数の比をとってみた。結果、X含みの精子の比率が(Y100に対し)、遺伝子数で104、塩基対数で103(Y除きで105)の結果となったので、アポトーシスでの説明はひとつの可能性として考えられるのではないか。
色体番号 | 遺伝子数(個) | 塩基対数(bp) |
1 | 2,610 | 279,000,000 |
2 | 1,748 | 251,000,000 |
3 | 1,381 | 221,000,000 |
4 | 1,024 | 197,000,000 |
5 | 1,190 | 198,000,000 |
6 | 1,394 | 176,000,000 |
7 | 1,378 | 163,000,000 |
8 | 927 | 148,000,000 |
9 | 1,076 | 140,000,000 |
10 | 983 | 143,000,000 |
11 | 1,692 | 148,000,000 |
12 | 1,268 | 142,000,000 |
13 | 496 | 118,000,000 |
14 | 1,173 | 107,000,000 |
15 | 906 | 100,000,000 |
16 | 1,032 | 104,000,000 |
17 | 1,394 | 88,000,000 |
18 | 400 | 86,000,000 |
19 | 1,592 | 72,000,000 |
20 | 710 | 66,000,000 |
21 | 337 | 45,000,000 |
22 | 701 | 48,000,000 |
X | 1,098 | 163,000,000 |
Y | 78 | 51,000,000 |
1-22とXの合計① | 26,510 | 3,203,000,000 |
1-22とYの合計② | 25,490 | 3,091,000,000 |
1-22の合計③ | 25,412 | 3,040,000,000 |
①÷② | 1.040 | 1.036 |
①÷③ | 1.043 | 1.054 |
〇 出生時に男子が多い一般的な別の説明として、フィッシャーの原理がある。
フィッシャーの原理とは、簡単に言えば、男女がそれぞれあぶれないので、多くの生物で男女比は1:1となるということ(その方が子孫を残せる)だ。ヒトの場合、男性の死亡率が高いので、残存する男女比は1:1にするには、男性は多く生まれるという説明だ。では、男女の死亡率の差異はどの程度なのか?
〇理論的には、男女の数が1:1となるのは、「出生性比 × 女性の男性に対する寿命比」が100だ。各国で寿命そのものは異なるものの、女性の男性に対する寿命の比は平均で94%であった。そのため、105 × 94% =98と100は下回る(男性が多くなる)ものの、100に近い数値にはなった。
1990年 | (単位: 歳) | ||
国名 | 男性平均寿命 | 女性平均寿命 | 男性/女性 |
日本 | 75.9 | 81.9 | 92.7% |
キューバ | 72.8 | 76.6 | 95.1% |
ドイツ | 72.0 | 78.5 | 91.7% |
米国 | 71.8 | 78.8 | 91.1% |
チリ | 69.4 | 76.1 | 91.2% |
マレーシア | 69.0 | 72.6 | 95.0% |
ヨルダン | 68.6 | 71.4 | 96.1% |
中国 | 67.4 | 70.7 | 95.3% |
韓国 | 67.3 | 75.5 | 89.1% |
ベトナム | 66.0 | 75.1 | 87.9% |
ハンガリー | 65.1 | 73.7 | 88.4% |
ロシア | 63.8 | 74.3 | 85.9% |
イラン | 61.6 | 66.3 | 93.0% |
南アフリカ | 58.5 | 65.9 | 88.7% |
ジンバブエ | 58.1 | 61.2 | 94.9% |
バングラデシュ | 58.1 | 58.8 | 98.8% |
アフガニスタン | 48.9 | 50.9 | 96.1% |
エチオピア | 45.6 | 48.7 | 93.8% |
世界計 | 63.2 | 67.6 | 93.5% |
2015年 | (単位: 歳) | ||
国名 | 男性平均寿命 | 女性平均寿命 | 男性/女性 |
日本 | 80.4 | 86.9 | 92.6% |
キューバ | 77.6 | 81.6 | 95.0% |
ドイツ | 78.7 | 83.4 | 94.4% |
米国 | 76.9 | 81.6 | 94.3% |
チリ | 79.0 | 84.7 | 93.2% |
マレーシア | 72.6 | 77.3 | 93.9% |
ヨルダン | 72.6 | 75.9 | 95.6% |
中国 | 74.5 | 77.5 | 96.1% |
韓国 | 78.8 | 85.2 | 92.4% |
ベトナム | 71.2 | 80.6 | 88.4% |
ハンガリー | 71.6 | 78.8 | 90.9% |
ロシア | 64.6 | 75.9 | 85.1% |
イラン | 74.5 | 76.7 | 97.2% |
南アフリカ | 55.5 | 59.5 | 93.2% |
ジンバブエ | 57.7 | 60.7 | 95.1% |
バングラデシュ | 70.7 | 73.3 | 96.5% |
アフガニスタン | 59.5 | 62.0 | 96.1% |
エチオピア | 62.7 | 66.6 | 94.1% |
世界計 | 69.6 | 73.8 | 94.3% |
出典: 世銀
(日本は男性の寿命が女性に比べて相対的に小さくなっている。人口の面では女性が多くなる傾向、また、世界平均的には男性よりも女性の方がストレスが少ないということなのかもしれない。)
〇もし仮に出生性比そのものが男女の寿命比に影響を与えていて、出生性比が上のXYのアポトーシスによるものだとしたら、、、XYの長さそのものが寿命に影響を与える可能性もあるのだが。。。要調査。(以上、全て推測であり、妄想の可能性もあります。)