弁護士の憂鬱

〇弁護士人口は平成 12 年の約 1 万 7000 人から平成24年に約 3 万 2000 人とほぼ倍増。これは、小泉政権時代に閣議決定された司法改革の中で、平成22年に司法試験の合格者数の目標を3000人に掲げたことによるもの。

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〇確かに、欧米諸国に比べ弁護士の割合は極端に低いことから、グローバル化を推進している中、もっと増やしたいという気持ちは分からなくはない。ただ、結果として、後に述べるようにその判断は誤りであった。人は増えたが仕事は増えなかった。訴訟大国アメリカや、陸続きの隣国と争いを続けてきた欧州と、争いを避ける日本では素地が違いすぎたのだ。(和を以て貴しとなす - 故事ことわざ辞典

・人口10万人あたりの弁護士人数( http://www.moj.go.jp/content/000102262.pdf(P34))

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
25人(H24) 368人 228人 190人 83人

 

グレーゾーン金利の禁止(平成22年完全施行)に伴う過払い金での弁護士報酬の増加はあった。武富士では累計2兆4000億円の過払い金支払があった模様で、そのうち報酬割合を20~40%とすれば、4800億円~9600億円が武富士分だけで弁護士に支払われていると考えられる。ただ、これは一時的なものだ。以外の弁護士案件業務が大きく増加した訳ではない。

過払い金返還請求にかかる弁護士費用、結局いくら? [過払い金返還請求] All About

武富士 - Wikipedia

 

〇当時1000人程度だった合格率を、一挙に3000人とした人数の根拠はなく、弁護士数をいたずらに増やしたことで様々な問題が生じている。(法科大学院定員割れ問題 - Wikipedia

 ・弁護士未登録者の増加(合格しても4人に1人は法律関係の職につけない

 ・「軒弁」などと呼ばれる弁護士の増加(「軒弁」とは既存の法律事務所に所属するが雇用されていない弁護士で、軒先を借りているという意味。事務所からの固定給は原則なく、収入は自力で稼がなければならない)

 ・年間所得の著しく低い弁護士の増加

また、さらに人工知能(AI)の 進化が弁護士の業務を奪うという予測もある。

 

〇懸念しているのは、弁護士が増えたことで、訴訟を煽る、すなわち、「和を尊しとなす考え」が弁護士主導で失われていくのではないか、ということだ。そのような事のないよう、原告側の弁護士の意図について、我々もできる限りチェックしていく必要がある。

弁護士が賠償額を増やせる理由 | 自転車事故相談.com

・サッカーボール裁判は平成16年度の事故。原告側の弁護士は、なぜ裁判を起こしたのか、その理由を明確にするべきだ(英会話教室NOVAの裁判のような志はあったのか?)。

(父親のコメント:私たち夫婦、息子にとって苦悩の10年でした。被害者の方にケガを負わせ、結果的に死亡したという事実を厳粛に受け止め、親としての道義的責任を痛切に感じています。息子は自分の蹴ったサッカーボールが原因で人が一人亡くなったということで、ずっと罪の意識を持ちながら、思春期、青年期を歩んできました。ただ親として子供を守ってやりたいと思ったのも事実です。息子は当日の放課後、学校のグラウンドで、友人とフリーキックの練習をしていたに過ぎません。もともとあったゴールにむかってボールをける、法律のことはよくわかりませんが、このことが法的に責められるくらい悪いことなのかという疑問がずっと拭えませんでした。)

 ・その他、違和感のある訴訟も多い。

弁護士 小松亀一法律事務所_弁護士等_弁護士界の憂鬱-”ポスト過払いバブル”はなんでもあり雑感4

 

〇もし、仕事を増やす可能性があるとすれば、海外案件だろう。こういう状況になってしまった以上、弁護士こそ国内ではなく、グローバル化を目指すべきだとは思う。また、(ほとんど増えてはいないが、)企業も海外の訴訟リスクに備えて、多いに弁護士を活用する必要がある。(ただ、経験豊富で利益至上主義の海外の弁護士に勝つのは難しいだろうが。)

 

 〇結局、この「しくじり」が示唆するものは何か?

・経済学で言えば、規制緩和などで供給(弁護士)を増やしても、需要(裁判)が増えないとうまくいかないことを示している。これは、デフレを供給の問題と考える新古典派と、需要(財政政策)も含めて考えるケインズ派の問題と同じであり、このケースでは、新古典派の考えでは駄目だったね、という結論だ。(供給増やしても、需要増えなかったね、ということ。ただし、このケースで需要(裁判)を増やすのは海外案件などしか意味はないが。なお、政府ももう少し法曹人口の雇用を増やすべきでは?)

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・もうひとつは、政治主導は間違いも多いということだろう。今、政府が進めようとしている国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小は大丈夫か? 



 

 

 

 

杞の国の人たち

上記記事では、広瀬氏は、「日本の場合も、われわれの貯金が戻ってこないリスクがある」、すなわち財政破綻の懸念を述べています。その中で「ボクのおカネは、キミのおカネじゃない!だから僕に無断で投資先を決めないで!」との記載は、日本にはまだあてはまらないと思います。それは、多くの日本人は株式に直接投資しているのではなく、預金をしているからです。そのため、少なくとも元本が保証されれば、その銀行が何で運用しようが、あまり気にしないと思います。今後、日本人の金融リテラシー(金融に対する理解度や活用能力)の上昇などで、直接金融が増えてくるのかもしれませんが、バブル崩壊リーマンショックのトラウマもあって、そう大きくは増えないのではないかと思います。

 

財政破綻のイメージは、金利上昇です。金利上昇とは、日本国債の価値が下がる、すなわち、日本国債を皆が買わなくなるということです。われわれのお金の使い道としては、①消費する、②タンス預金する、③預金する(銀行が国債等を買う)、④投資する(国内株・外国株・外国通貨・不動産・金を買う)があります。この国債の財源になっているのが③の預金であり、「国の借金増加」により日本国債のデフォルト懸念(信用不安)による取り付け騒ぎから、③の預金から②のタンス預金や④外国通貨等に移し替えることで、金利が上昇するだろうというのが財政破綻者の理屈です。

 

ただ、理論的には自国発行の債券である日本国債のデフォルトはありえません。デフォルトは償還額を支払えないということですが、日本銀行で紙幣を刷ればいくらでも支払うことができ、極論すれば、今でも政府の借金もすぐに消すことができます(日銀に借金を移し替え、紙幣発行による負債に変わるイメージ)。現在の異次元の量的緩和(年80兆円の日銀の国債購入)により、(新規の発行を除けば)その購入分だけ、政府の借金は減少してきています。そのため、考えるべきは、政府の借金だけではなく「日銀の借金(発行紙幣)」と「政府の借金(国債残高)」の合計が重要で、それが大きいのか小さいのかは、「金利水準」(経済成長+通貨の信認)と「インフレ率」(モノと通貨の価値の対比)で相対的に測れるということになります。

http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2013/vol206/str1308b.pdf

現在の低い「金利水準」(すなわち信認が高い)、低い「インフレ率」(通貨が高い)からすれば、まだまだ国債発行は可能、財政支出は可能という判断ができます(通貨の価値が高いので通貨の価値を落とす⇒物価を上げる)。すなわち、デフレでモノよりも通貨の価値が上昇した日本は、金融政策・財政政策の余力が生じていると考えられます。成長のため、政府による様々な投資が可能であり、今の安倍政権財政再建よりも経済成長を優先させたのは望ましいと考えています。

(今後、更に財政支出を実施して、どこかで金利、インフレ率が上昇(通貨が物価に対して価値が下がる)すれば、財政支出の抑制が必要となってきます。)

なお、金融政策・財政政策は、簡単に言えば次のとおり。

・金融政策=「銀行の国債」を買って、「カネ」を渡すこと

・財政政策=「民間企業の労働力」を買って、「カネ」を渡すこと

      または、「国民からの税金」を引き下げ、「カネ」を渡すこと

 

最後に、広瀬氏の記事に対して反論しているように見えますが、一般の日本国債財政破綻に対する反論ということです(広瀬氏のブログは愛読しています)。

 

ひともをし

今の日本の財政支出に対して、反対派(財政規律派)と賛成派(リフレ派)がいる。反対派は、財務省日本経済新聞をはじめとするマスコミ、経済学者、エコノミストなど、ほとんどの人達だ(世界的にもそうだ)。彼らは、財政支出を縮減してきたから、日本のデフレが継続し赤字が拡大してきたことに気付いていない。なぜ気付かないのだろう。

経済学派にも2通りあって、アダムスミス(古典派)からハイエクフリードマンに続く新古典派は、自由放任(レッセフェール)に重きをおいており、財政規律派(小さな政府)と言える。一方、ケインズは不況の際は、財政支出を行い有効需要を増やすというリフレ派と言える。全く答えの違う経済学って一体なんなのだろう、、、と考えて見た。

この2つの違いは、もしかすると目的の違いなのではないか?能力主義格差社会を望ましいと目指すのが新古典派、能力によらず公平な世界を目指すのがケインジアンなのではないか?目的が違うのなら、答えも違う。なるほど、新聞記者やエコノミストなど能力の高い人は新古典派を支持する訳だ。米国はエリート社会であり、小さな政府が望ましいとされており結果、格差社会だ。

財政支出を批判している日本経済新聞の記事を読むと、またか、と気分が落ち込む。ただ、少数派だが、ケインジアンはいる。財政支出の必要性を声高に叫んでいる人を見ると、格差社会にならないよう頑張らないと、と思うのだ。少しおこがましく、解釈は違うのかもしれないが、百人一首の次の句で頑張ろう。

人もをし(愛し) 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は (後鳥羽院(99番))

財政支出に賛成の人もいれば反対の人もいる(恨めしい)、つまらない。この世を良くしたいと思うゆえに物思いする自分は。

小倉百人一首の全首を見る|小倉百人一首殿堂 時雨殿

 

ちなみに次の広瀬隆氏も新古典派です(運用出身の人は新古典派が多いようです)。 能力の高い人達って、、、

 

円安と量的緩和

〇日銀の黒田新総裁が「異次元金融緩和」を行った結果、円安となった。当たり前と言えば当たり前だが、量的緩和で円安となった理由を整理してみた。

USドル/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳

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以下が、平成26年度の国債(5年以上)の年間発行予定額であり、日銀は量的緩和により、そのうち年間80兆円と大部分の国債を購入することになる。

 <カレンダーベース市中発行額>

市中発行額(平成26年度)
    区分   発行予定額 
    40年債   1.6兆円
    30年債   8.0兆円
    20年債   14.4兆円
    10年債   28.8兆円
    5年債   32.4兆円
   
    上記計   85.2兆円

 

金融機関に与える影響のイメージはこんな感じだと思う。

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異次元の日銀量的緩和の“カラクリ”(土居雅紹) - 初心者向け | FX攻略.com

 

〇円安になる条件を考えてみた。量的緩和により①~③(円ドルの需給、金利低下、インフレ期待)からは円安となることが説明できる。

①円ドルの需給:円が増える、もしくは、(日本にある)ドルが減れば、円安傾向になると言える。

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・まさにこの日銀の量的緩和で円が増えたことになり、円安になったと言える。

・(日本にある)ドルはどうかというと、経常収支(=「貿易収支」+「サービス収支」+「所得収支」)と資本収支の合計はプラスになっており、ドルは積み上がっている。ただし、現在、貿易収支はマイナスとなっている。

 

②日本や米国への投資:日本が投資に適さない場合(米国の方が投資に適している場合)は(①のとおり(日本の)ドルが減るので)円安になる。内外金利差で日本の金利が低下、または、日本の景気が悪い、日本の将来の株価下落が見込める、などの場合には円安。その他、米国の方が適している状況として、戦時にはドルが強くなるなどもある。

・日本の金利は低下したので内外金利差からは円安。

アベノミクスで日本の景気回復、株価上昇期待があると思われるのでこの点からは円高。

 

③インフレ期待:インフレでは通貨の価値が低下するので、通貨安になる。日本はデフレであるがアベノミクスでインフレ目標を設定しており、円安になる。

 

④現物資産との関係(原油等):原油価格が下がれば、米国の個人消費を改善させるので、ドル高(円安)になると言われており、現在原油価格が下落しているのでドル高(円安)傾向になる。(シェールオイル関連企業は景気悪化に寄与するが全体で景気にプラス。(また、ドル高になると金相場は下落する傾向にある。)

 

〇ちなみに量的緩和で株価上昇として考えられる要因は次のとおり。

アベノミクスによる将来の株価上昇期待(GPIFも日本株式に投資)

量的緩和からの資金増加による投資

・円安による海外投資家の日本株の割安感による投資(株式売買の約7割は海外投資家)(投資部門別 株式売買状況(東証))(通常円安になれば海外の株式保有者は損するので売却もあるが)

 

 

 

一次不定方程式

一次不定方程式で、整数論の基礎的な部分を学べるのでまとめてみた。次の(1)~(4)は本質的には同じだ。

 

(1)次の一次不定方程式の整数解をすべて求めよ。

        \displaystyle 7x + 10y = 1 ・・・①

(2)次の直線の通る格子点をすべて求めよ。

        \displaystyle 7x + 10y = 1

(3)xの解を求めよ。

        \displaystyle 7x≡1 (mod\ 10)

(4)yの解を求めよ。

        \displaystyle 10y \equiv 3y \equiv 1 (mod\ 7)

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(1)の形式で出題された場合はひとつの解を求めて解くことができる(仮に係数が大きい場合でも互除法で必ず一般解は求まる(当然、解の存在する場合(右辺の値が、係数の最大公約数の倍数となっている場合)))。

適当に見つけた解(\displaystyle x=3\ ,y=-2)を入力した\displaystyle 7(3)+10(-2)=1から①を辺々引けば、\displaystyle 7(-x+3)=10(y+2)となる。7と10は互いに素なので\displaystyle (-x+3)は10の倍数となり、\displaystyle (-x+3)=10s\displaystyle sは整数)とおけるので、\displaystyle (y+2)=7sとなり、結局、(1)(2)の解答は次のとおり。(\displaystyle xが10減って、\displaystyle yが7増えても与式の左辺の値は変わらない。)

\[ \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) = \left( \begin{array}{l} \ \ 3 \\ -2 \end{array} \right) + \left( \begin{array}{l} -10 \\ \ \ 7 \end{array} \right) s \ \ \ (sは整数) \]

 

(3)は \displaystyle mod\ 10なので下一桁を見ればよい。九九表の7の段(カッコ書きは下一桁)を見れば、下一桁の数値がすべて異なっているのが分かる(これは7と10が互いに素だから。1、3、9の段も下一桁はすべて異なっている。なお、1、3、7、9は剰余類Z/10Zの乗算で群をなす。なお、群は閉結単逆を満たせば良い(閉じていて、結合法則が成り立ち、単位元、逆元がある))。ここで \displaystyle 7x≡1 (mod\ 10)なので、1桁目が1となっているのは3のときでそれが答(すなわち、\displaystyle x≡3(mod\ 10)であり、\displaystyle x=3+10s(sは整数)

(九九表)

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 4 6 8 10 12 14 16 18
3 6 9 12 15 18 21 24 27
4 8 12 16 20 24 28 32 36
5 10 15 20 25 30 35 40 45
6 12 18 24 30 36 42 48 54

7

(7)

14

(4)

21

(1)

28

(8)

35

(5)

42

(2)

49

(9)

56

(6)

63

(3)

8

16 24 32 40 48 56 64 72
9 18 27 36 45 54 63 72 81

 

オイラーの定理を使って解く場合、まず、オイラー\displaystyle φ(n)とは、「nより小さい自然数の中でnと互いに素なものの個数」であり、上で述べたとおり、\displaystyle φ(10)=4(1、3、7、9の4つ)である。ここで、オイラーの定理は次のとおり。

       \displaystyle x\displaystyle nと互いに素の場合、\displaystyle x^{φ(n)}≡1 (mod \ n)

7と10は互いに素なので、\displaystyle 7^{φ(10)}≡7^4≡7・7^3≡7・3≡1 (mod \ 10)となり、\displaystyle x≡3 (mod \ 10)と求まる。

 

(4)は \displaystyle mod\ 7であるが7は素数なので、原子根が存在する。7の原子根は3であり、1~6はそれぞれ3の累乗で表せる。 {1,2,3,4,5,6}は {3^6( \equiv 1),3^2( \equiv 2),3^1( \equiv 3),3^4( \equiv 4),3^5( \equiv 5),3^3( \equiv 6)}に対応する。オイラーの定理で解いた場合とおなじであるが、\displaystyle 3^6≡3・3^5≡3・5≡1 (mod \ 7)となり、\displaystyle x≡5 (mod \ 7)と求まる。

 

(参考)(7と10ではなく、) 3と5の場合のイメージ

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財政政策におけるタカ派

〇金融政策において、金融引き締め(利上げ)賛成派を「タカ派」、金融緩和(利下げ・量的緩和)賛成派を「ハト派」という。

  タカ派 ハト派
意味 強硬的な政治信条を持つ人や集団 平和的な手段で問題を解決しようとする人や集団
経済 経済状況にたいして強気なスタンスであり、利上げ賛成派 経済状況にたいして慎重な見方をすることや、利上げ反対派
代表的なFOMCメンバー プロッサー総裁
フィッシャー総裁
イエレン議長(FRB
バーナンキ前議長

タカ派・ハト派とは?|FX用語集 | FX初心者入門|みんなの外為

 

〇金融タカ派として有名なのはポール・ボルカーFRB元議長だ。「インフレファイター」と呼ばれた彼は、政策金利を急上昇させ、1980年に12%を超えていたインフレ率を3年後に3%まで低下させた実績を持つ(ただし、失業率が11%に上昇するなどの副作用を伴った)。

 

〇一方、ベン・バーナンキFRB前議長は、過去に日本のバブル崩壊後の金融政策が生温いことを批判、ヘリコプターからおカネをばら撒けばよいと発言してヘリコプターベンと揶揄された金融ハト派であった(ただし、リーマンショックに対する金融緩和の出口戦略(タカ派的戦略)では、バーナンキショックを起こしている。)。なお、アベノミクスでは量的緩和を推進しており、金融ハト派政策だ。

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http://kaburi2ki.com/?p=1773

株・債券急落、円高巻き戻し… 市場を混乱に陥れた“バーナンキ・ショック” | News Inside | デイリー・ダイヤモンド

 

〇金融政策と同様、財政政策についても、消費税増税財政支出抑制を主張するタカ派と、減税・財政出動を主張するハト派に分かれるのではないか。この分類では、財務省をはじめ、ほとんどの経済学者、アナリスト、マスコミはタカ派、消費増税を推進・(財政出動を唱えながら)公共事業を増やさないアベノミクス財政タカ派と言える。

タカ派 ハト派
経済状況にたいして強気なスタンスであり、増税派、財政支出否定派 経済状況にたいして慎重な見方をすることや、減税派、財政支出容認派(公共事業支出増を容認)
縮小的な財政政策 拡張的な財政政策
新古典派 ケインズ派

 

ハト派の主張する公共事業投資は、次の点で疑問視はされている。

 ①支出が有効活用されない(無駄な支出となる)可能性がある

 ②根本的な解決策となっていない(企業の延命策である)可能性がある

 ③経済への効果が小さい(公共事業乗数効果が小さい)可能性がある 

その他にも、政治との相性の悪さ(景気が良いときに公共事業を引き締めるのは難しい)、公共事業で海外企業を利用するなどの自国の経済活性に使われない可能性があること、議会手続等があるためタイミングが遅いこと、などがある。

 

公共事業に上記のようなデメリットの可能性はあるにせよ、景気対策として、財政タカ派と同様に議論されるべきであるが、専門家である経済学者や経済新聞は、日本経済の為ではなく財務省の政治力に屈して、議論しない。そういう意味で財政タカ派一色の日本経済新聞を読むと暗澹たる気持ちになるのだ。

1人当たり月額GDP

〇平成25年度の日本のGDPは一人当たり毎月平均32万円。3人家族だと、95万円だ。(日本全体のGDPは平成25年度で483兆円)

平成25年度国民経済計算確報(フロー編)ポイント.pdf

統計局ホームページ/人口推計(平成26年8月確定値) (2015年1月20日公表)

 

〇この一人当たり毎月32万円を家計や政府などが支出したということ。内訳(支出ベース)は、家計が19万円、政府が6.5万円、総固定資本形成が7万円(民間法人が新規に購入した建物など)等。

 

〇家計支出19万円の内訳(毎月家計が何に使っているか)は次のとおり。 食費は3万円程度(食費っていくらぐらいですか? | クックパッド みんなのカフェ)。約20年前の平成6年度からは、住居等が増加、被服・履物が大きく減少(ユニクロの影響?)、通信費は倍増。全体では20年前から7%の増加。

    (参考) (参考)
       支出の目的 平成25年度 平成6年度 増加額
       
 1.食料・非アルコール飲料 2.7万円 2.8万円 -0.2万円
 2.アルコール飲料・たばこ 0.5万円 0.6万円 -0.1万円
 3.被服・履物 0.7万円 1.2万円 -0.5万円
 4.住居・電気・ガス・水道 4.7万円 3.6万円 1.1万円
 5.家具・家庭機器・家事サービス 0.8万円 0.9万円 -0.1万円
 6.保健・医療 0.9万円 0.5万円 0.3万円
 7.交通 2.2万円 1.9万円 0.3万円
 8.通信 0.6万円 0.3万円 0.3万円
 9.娯楽・レジャー・文化 1.7万円 1.8万円 -0.1万円
10.教育 0.4万円 0.4万円 0.0万円
11.外食・宿泊 1.2万円 1.2万円 0.0万円
12.その他 2.5万円 2.3万円 0.2万円
合計(国内家計最終消費支出) 18.9万円 17.6万円 1.4万円

家計の目的別最終消費支出(名目)の構成

 

〇政府支出6.5万円の内訳(毎月政府が何に使っているか)は次のとおり。保健に2.2万円、経済と教育にそれぞれ0.9万円。 防衛は0.3万円でGDP合計32万円の約1%。8年前の平成17年度からは、保健と社会保障で増加、以外は減少(全体で増加)。

    (参考) (参考)
機能別支出 平成25年度 平成17年度 増加額
       
 1.一般公共サービス 0.6万円 0.7万円 -0.2万円
  ・行政・立法機関等 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・一般行政 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・公的債務取引 0.1万円 0.2万円 -0.1万円
 2.防     衛 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・軍事防衛 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
 3.公共の秩序・安全 0.4万円 0.4万円 -0.0万円
  ・警察サービス 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・消防サービス 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 4.経済業務 0.9万円 0.8万円 0.0万円
  ・農畜産業、林業、漁業、狩猟 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・運輸 0.4万円 0.3万円 0.1万円
  ・その他産業 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 5.環境保護 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・廃棄物管理 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 6.住宅・地域アメニティ 0.1万円 0.1万円 0.0万円
  ・地域開発 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 7.保   健 2.2万円 1.8万円 0.4万円
  ・医療用品等 0.4万円 0.2万円 0.1万円
  ・外来サービス 0.9万円 0.8万円 0.1万円
  ・病院サービス 0.8万円 0.7万円 0.2万円
 8.娯楽・文化・宗教 0.1万円 0.1万円 -0.0万円
 9.教   育 0.9万円 1.0万円 -0.0万円
  ・就学前・初等教育 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・中等教育 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・高等教育 0.1万円 0.1万円 -0.0万円
  ・その他の教育 0.2万円 0.1万円 0.0万円
10.社会保護 0.8万円 0.6万円 0.2万円
 ・老齢 0.6万円 0.4万円 0.2万円
 ・家庭・児童 0.1万円 0.1万円 0.0万円
合計(政府の機能別最終消費支出) 6.5万円 6.1万円 0.4万円

 政府最終消費支出.pdf