円安と量的緩和

〇日銀の黒田新総裁が「異次元金融緩和」を行った結果、円安となった。当たり前と言えば当たり前だが、量的緩和で円安となった理由を整理してみた。

USドル/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳

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以下が、平成26年度の国債(5年以上)の年間発行予定額であり、日銀は量的緩和により、そのうち年間80兆円と大部分の国債を購入することになる。

 <カレンダーベース市中発行額>

市中発行額(平成26年度)
    区分   発行予定額 
    40年債   1.6兆円
    30年債   8.0兆円
    20年債   14.4兆円
    10年債   28.8兆円
    5年債   32.4兆円
   
    上記計   85.2兆円

 

金融機関に与える影響のイメージはこんな感じだと思う。

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異次元の日銀量的緩和の“カラクリ”(土居雅紹) - 初心者向け | FX攻略.com

 

〇円安になる条件を考えてみた。量的緩和により①~③(円ドルの需給、金利低下、インフレ期待)からは円安となることが説明できる。

①円ドルの需給:円が増える、もしくは、(日本にある)ドルが減れば、円安傾向になると言える。

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・まさにこの日銀の量的緩和で円が増えたことになり、円安になったと言える。

・(日本にある)ドルはどうかというと、経常収支(=「貿易収支」+「サービス収支」+「所得収支」)と資本収支の合計はプラスになっており、ドルは積み上がっている。ただし、現在、貿易収支はマイナスとなっている。

 

②日本や米国への投資:日本が投資に適さない場合(米国の方が投資に適している場合)は(①のとおり(日本の)ドルが減るので)円安になる。内外金利差で日本の金利が低下、または、日本の景気が悪い、日本の将来の株価下落が見込める、などの場合には円安。その他、米国の方が適している状況として、戦時にはドルが強くなるなどもある。

・日本の金利は低下したので内外金利差からは円安。

アベノミクスで日本の景気回復、株価上昇期待があると思われるのでこの点からは円高。

 

③インフレ期待:インフレでは通貨の価値が低下するので、通貨安になる。日本はデフレであるがアベノミクスでインフレ目標を設定しており、円安になる。

 

④現物資産との関係(原油等):原油価格が下がれば、米国の個人消費を改善させるので、ドル高(円安)になると言われており、現在原油価格が下落しているのでドル高(円安)傾向になる。(シェールオイル関連企業は景気悪化に寄与するが全体で景気にプラス。(また、ドル高になると金相場は下落する傾向にある。)

 

〇ちなみに量的緩和で株価上昇として考えられる要因は次のとおり。

アベノミクスによる将来の株価上昇期待(GPIFも日本株式に投資)

量的緩和からの資金増加による投資

・円安による海外投資家の日本株の割安感による投資(株式売買の約7割は海外投資家)(投資部門別 株式売買状況(東証))(通常円安になれば海外の株式保有者は損するので売却もあるが)

 

 

 

一次不定方程式

一次不定方程式で、整数論の基礎的な部分を学べるのでまとめてみた。次の(1)~(4)は本質的には同じだ。

 

(1)次の一次不定方程式の整数解をすべて求めよ。

        \displaystyle 7x + 10y = 1 ・・・①

(2)次の直線の通る格子点をすべて求めよ。

        \displaystyle 7x + 10y = 1

(3)xの解を求めよ。

        \displaystyle 7x≡1 (mod\ 10)

(4)yの解を求めよ。

        \displaystyle 10y \equiv 3y \equiv 1 (mod\ 7)

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(1)の形式で出題された場合はひとつの解を求めて解くことができる(仮に係数が大きい場合でも互除法で必ず一般解は求まる(当然、解の存在する場合(右辺の値が、係数の最大公約数の倍数となっている場合)))。

適当に見つけた解(\displaystyle x=3\ ,y=-2)を入力した\displaystyle 7(3)+10(-2)=1から①を辺々引けば、\displaystyle 7(-x+3)=10(y+2)となる。7と10は互いに素なので\displaystyle (-x+3)は10の倍数となり、\displaystyle (-x+3)=10s\displaystyle sは整数)とおけるので、\displaystyle (y+2)=7sとなり、結局、(1)(2)の解答は次のとおり。(\displaystyle xが10減って、\displaystyle yが7増えても与式の左辺の値は変わらない。)

\[ \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) = \left( \begin{array}{l} \ \ 3 \\ -2 \end{array} \right) + \left( \begin{array}{l} -10 \\ \ \ 7 \end{array} \right) s \ \ \ (sは整数) \]

 

(3)は \displaystyle mod\ 10なので下一桁を見ればよい。九九表の7の段(カッコ書きは下一桁)を見れば、下一桁の数値がすべて異なっているのが分かる(これは7と10が互いに素だから。1、3、9の段も下一桁はすべて異なっている。なお、1、3、7、9は剰余類Z/10Zの乗算で群をなす。なお、群は閉結単逆を満たせば良い(閉じていて、結合法則が成り立ち、単位元、逆元がある))。ここで \displaystyle 7x≡1 (mod\ 10)なので、1桁目が1となっているのは3のときでそれが答(すなわち、\displaystyle x≡3(mod\ 10)であり、\displaystyle x=3+10s(sは整数)

(九九表)

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 4 6 8 10 12 14 16 18
3 6 9 12 15 18 21 24 27
4 8 12 16 20 24 28 32 36
5 10 15 20 25 30 35 40 45
6 12 18 24 30 36 42 48 54

7

(7)

14

(4)

21

(1)

28

(8)

35

(5)

42

(2)

49

(9)

56

(6)

63

(3)

8

16 24 32 40 48 56 64 72
9 18 27 36 45 54 63 72 81

 

オイラーの定理を使って解く場合、まず、オイラー\displaystyle φ(n)とは、「nより小さい自然数の中でnと互いに素なものの個数」であり、上で述べたとおり、\displaystyle φ(10)=4(1、3、7、9の4つ)である。ここで、オイラーの定理は次のとおり。

       \displaystyle x\displaystyle nと互いに素の場合、\displaystyle x^{φ(n)}≡1 (mod \ n)

7と10は互いに素なので、\displaystyle 7^{φ(10)}≡7^4≡7・7^3≡7・3≡1 (mod \ 10)となり、\displaystyle x≡3 (mod \ 10)と求まる。

 

(4)は \displaystyle mod\ 7であるが7は素数なので、原子根が存在する。7の原子根は3であり、1~6はそれぞれ3の累乗で表せる。 {1,2,3,4,5,6}は {3^6( \equiv 1),3^2( \equiv 2),3^1( \equiv 3),3^4( \equiv 4),3^5( \equiv 5),3^3( \equiv 6)}に対応する。オイラーの定理で解いた場合とおなじであるが、\displaystyle 3^6≡3・3^5≡3・5≡1 (mod \ 7)となり、\displaystyle x≡5 (mod \ 7)と求まる。

 

(参考)(7と10ではなく、) 3と5の場合のイメージ

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財政政策におけるタカ派

〇金融政策において、金融引き締め(利上げ)賛成派を「タカ派」、金融緩和(利下げ・量的緩和)賛成派を「ハト派」という。

  タカ派 ハト派
意味 強硬的な政治信条を持つ人や集団 平和的な手段で問題を解決しようとする人や集団
経済 経済状況にたいして強気なスタンスであり、利上げ賛成派 経済状況にたいして慎重な見方をすることや、利上げ反対派
代表的なFOMCメンバー プロッサー総裁
フィッシャー総裁
イエレン議長(FRB
バーナンキ前議長

タカ派・ハト派とは?|FX用語集 | FX初心者入門|みんなの外為

 

〇金融タカ派として有名なのはポール・ボルカーFRB元議長だ。「インフレファイター」と呼ばれた彼は、政策金利を急上昇させ、1980年に12%を超えていたインフレ率を3年後に3%まで低下させた実績を持つ(ただし、失業率が11%に上昇するなどの副作用を伴った)。

 

〇一方、ベン・バーナンキFRB前議長は、過去に日本のバブル崩壊後の金融政策が生温いことを批判、ヘリコプターからおカネをばら撒けばよいと発言してヘリコプターベンと揶揄された金融ハト派であった(ただし、リーマンショックに対する金融緩和の出口戦略(タカ派的戦略)では、バーナンキショックを起こしている。)。なお、アベノミクスでは量的緩和を推進しており、金融ハト派政策だ。

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http://kaburi2ki.com/?p=1773

株・債券急落、円高巻き戻し… 市場を混乱に陥れた“バーナンキ・ショック” | News Inside | デイリー・ダイヤモンド

 

〇金融政策と同様、財政政策についても、消費税増税財政支出抑制を主張するタカ派と、減税・財政出動を主張するハト派に分かれるのではないか。この分類では、財務省をはじめ、ほとんどの経済学者、アナリスト、マスコミはタカ派、消費増税を推進・(財政出動を唱えながら)公共事業を増やさないアベノミクス財政タカ派と言える。

タカ派 ハト派
経済状況にたいして強気なスタンスであり、増税派、財政支出否定派 経済状況にたいして慎重な見方をすることや、減税派、財政支出容認派(公共事業支出増を容認)
縮小的な財政政策 拡張的な財政政策
新古典派 ケインズ派

 

ハト派の主張する公共事業投資は、次の点で疑問視はされている。

 ①支出が有効活用されない(無駄な支出となる)可能性がある

 ②根本的な解決策となっていない(企業の延命策である)可能性がある

 ③経済への効果が小さい(公共事業乗数効果が小さい)可能性がある 

その他にも、政治との相性の悪さ(景気が良いときに公共事業を引き締めるのは難しい)、公共事業で海外企業を利用するなどの自国の経済活性に使われない可能性があること、議会手続等があるためタイミングが遅いこと、などがある。

 

公共事業に上記のようなデメリットの可能性はあるにせよ、景気対策として、財政タカ派と同様に議論されるべきであるが、専門家である経済学者や経済新聞は、日本経済の為ではなく財務省の政治力に屈して、議論しない。そういう意味で財政タカ派一色の日本経済新聞を読むと暗澹たる気持ちになるのだ。

1人当たり月額GDP

〇平成25年度の日本のGDPは一人当たり毎月平均32万円。3人家族だと、95万円だ。(日本全体のGDPは平成25年度で483兆円)

平成25年度国民経済計算確報(フロー編)ポイント.pdf

統計局ホームページ/人口推計(平成26年8月確定値) (2015年1月20日公表)

 

〇この一人当たり毎月32万円を家計や政府などが支出したということ。内訳(支出ベース)は、家計が19万円、政府が6.5万円、総固定資本形成が7万円(民間法人が新規に購入した建物など)等。

 

〇家計支出19万円の内訳(毎月家計が何に使っているか)は次のとおり。 食費は3万円程度(食費っていくらぐらいですか? | クックパッド みんなのカフェ)。約20年前の平成6年度からは、住居等が増加、被服・履物が大きく減少(ユニクロの影響?)、通信費は倍増。全体では20年前から7%の増加。

    (参考) (参考)
       支出の目的 平成25年度 平成6年度 増加額
       
 1.食料・非アルコール飲料 2.7万円 2.8万円 -0.2万円
 2.アルコール飲料・たばこ 0.5万円 0.6万円 -0.1万円
 3.被服・履物 0.7万円 1.2万円 -0.5万円
 4.住居・電気・ガス・水道 4.7万円 3.6万円 1.1万円
 5.家具・家庭機器・家事サービス 0.8万円 0.9万円 -0.1万円
 6.保健・医療 0.9万円 0.5万円 0.3万円
 7.交通 2.2万円 1.9万円 0.3万円
 8.通信 0.6万円 0.3万円 0.3万円
 9.娯楽・レジャー・文化 1.7万円 1.8万円 -0.1万円
10.教育 0.4万円 0.4万円 0.0万円
11.外食・宿泊 1.2万円 1.2万円 0.0万円
12.その他 2.5万円 2.3万円 0.2万円
合計(国内家計最終消費支出) 18.9万円 17.6万円 1.4万円

家計の目的別最終消費支出(名目)の構成

 

〇政府支出6.5万円の内訳(毎月政府が何に使っているか)は次のとおり。保健に2.2万円、経済と教育にそれぞれ0.9万円。 防衛は0.3万円でGDP合計32万円の約1%。8年前の平成17年度からは、保健と社会保障で増加、以外は減少(全体で増加)。

    (参考) (参考)
機能別支出 平成25年度 平成17年度 増加額
       
 1.一般公共サービス 0.6万円 0.7万円 -0.2万円
  ・行政・立法機関等 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・一般行政 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・公的債務取引 0.1万円 0.2万円 -0.1万円
 2.防     衛 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・軍事防衛 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
 3.公共の秩序・安全 0.4万円 0.4万円 -0.0万円
  ・警察サービス 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・消防サービス 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 4.経済業務 0.9万円 0.8万円 0.0万円
  ・農畜産業、林業、漁業、狩猟 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・運輸 0.4万円 0.3万円 0.1万円
  ・その他産業 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 5.環境保護 0.2万円 0.2万円 -0.0万円
  ・廃棄物管理 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 6.住宅・地域アメニティ 0.1万円 0.1万円 0.0万円
  ・地域開発 0.1万円 0.1万円 0.0万円
 7.保   健 2.2万円 1.8万円 0.4万円
  ・医療用品等 0.4万円 0.2万円 0.1万円
  ・外来サービス 0.9万円 0.8万円 0.1万円
  ・病院サービス 0.8万円 0.7万円 0.2万円
 8.娯楽・文化・宗教 0.1万円 0.1万円 -0.0万円
 9.教   育 0.9万円 1.0万円 -0.0万円
  ・就学前・初等教育 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・中等教育 0.3万円 0.3万円 -0.0万円
  ・高等教育 0.1万円 0.1万円 -0.0万円
  ・その他の教育 0.2万円 0.1万円 0.0万円
10.社会保護 0.8万円 0.6万円 0.2万円
 ・老齢 0.6万円 0.4万円 0.2万円
 ・家庭・児童 0.1万円 0.1万円 0.0万円
合計(政府の機能別最終消費支出) 6.5万円 6.1万円 0.4万円

 政府最終消費支出.pdf

 

世界のニュースが知りたい

朝日新聞で次のニュースを見た。ネットでどこまで詳しく調べられるか試してみた。

モザンビークグーグルマップは次のとおり。

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〇次のサイトでは、世界各国のマスコミのリンクが張ってある。そこからモザンビークの新聞を選んで現地のニュースを調べてみる。ほとんどの言語はグーグル翻訳で和訳可能だ。

〇現地の記事を見つけた(画像の記事はグーグル翻訳済で日本語はちょっと変)。現地の記事でもワニの胆汁といっている。翻訳では社長とあるが、第3代大統領のこと。3日間、モザンビークは喪に服したようだ。

allAfrica.com: Mozambique Police Investigate After Scores Die From Poisoned Beer

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〇2週間後の記事。まだ、原因は不明とのことで、ワニの胆汁が原因とは書かれていない(これもグーグル翻訳済で日本語はちょっと変)

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http://www.jornalnoticias.co.mz/index.php/provincia-em-foco/30341-tete-duas-semanas-depois-ainda-por-esclarecer-causas-da-tragedia-de-chitima

  

〇日本語のサイトでこのニュースを調べている記事を見つけた。ワニの肉は白身で美味しいし、毒はないようだ。ワニの胆汁に毒があると誤解されたのは、アフリカで古くからワニの胆汁は黒魔術で猛毒として使われているという迷信からではないかとのこと。

 

〇次のフォーブスの記事では、毒は植物由来の強心配糖体ではないかとのこと。Wikipediaでは、アフリカではカエルから得られる強心配糖体は矢毒として用いられるそうだ。

Crocodile Bile Expert Suspects Toxic Pesticide In Mozambique Tainted Beer Tragedy - Forbes

強心配糖体 - Wikipedia

 

〇今回調べてみて、ネットで世界中の情報が入手可能なこと、ただほしい情報にたどり着くのに時間がかかることやグーグル翻訳(現地語→英語→日本語で訳しているはず)をもう少しレベルアップしてほしいことなどを感じました。

(今回の事故でお亡くなりになられた方にご冥福をお祈りいたします。)

 

 (参考)以下のサイトでも世界のニュースが入手可能です。

 

 

異物混入の割合を試算してみた(数学雑記)

ペヤングからマクドナルドにつながる異物混入が話題だ。ただし、この件での健康被害の報告はなく、食品メーカーなどに同情的な意見も多い(消費者対応がまずかっただけ)。

〇上記の記事のように昔から異物混入は頻繁に起こっていたが、日本の食品メーカーなどは品質管理の向上に努力してきた。品質管理での高い目標であるシックスシグマ(100万回で3,4回の不具合しか許さない極めて高い品質管理)で管理されていた場合で、どのくらいの確率で異物混入が発生するか試算してみると(前提によるが)年間0.3%の確率で異物混入(不良品)にあたる試算になり、交通事故(平成25年度で78万人)に比べれば確実に少なく、異物混入の実績を踏まえればマスコミは騒ぎすぎなのだろう。

シックス・シグマ - Wikipedia

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(参考)交通事故の発生状況(平成25年度)

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食品製造現場における総合的な異物混入対策の考え方と進め方|プロフェッショナルに訊く|特集|イカリ消毒株式会社

 

 

生産性の向上とデフレ

〇企業は、消費者ニーズに応えるため、また、利益を上げるため、「安く早く便利にモノを提供する」ように努力してきた。付加価値のある新しいものの開発(結果、モノの価値は上昇)も企業の目的であるが、時間がかかりリスクも高い(可能性は低いが成功した時の収益は大きい)。この安く早く便利にモノを提供するという生産性の向上は、モノの価値を下げるとともに労働の価値も引き下げることにつながる。少ない人数(労働)で多くのモノを提供できるため、これまでと同じだけのモノを提供するのであれば、必要な労働は減ることになる(労働単価は上がる可能性はあるが、労働時間は短くなり、トータルで減少)。

〇自由競争に基づく企業活動は、本質的にデフレ化を促進するものなのだ(一定程度市場飽和、かつ、労働力が豊富にあるという前提であるが)。セブンカフェでは、スターバックス並のコーヒーが100円で飲める(スターバックスでは300円程度)のはデフレ促進の恩恵だ。デフレが問題なのは消費者ではなく、労働者なのだ。その労働者に対し、アベノミクス法人税を大幅に引き下げても、生産性の向上や賃金の下方硬直性(景気悪化時に賃金を下げられないこと)を意識し、企業は賃金の本格的な引上げには慎重だ。

コーヒー飲み比べテスト: セブンイレブンのコーヒーが圧勝したのは、単品販売のスケールメリットです | 小川先生 〜 小川孔輔のウェブサイト

〇経済の本質は、需要と供給だ。消費者が購入したモノ(需要)と企業が販売したモノ(供給)は基本的に等しくなり、この総需要(買ったモノの合計=総供給(売ったモノの合計))が大きくなれば景気が良くなったという判断になる。また、需要と供給が等しいことから、どちらかの小さい方で抑えられ、どちらがネックなのかでデフレ・インフレが決まる。現在はデフレで、上で述べた企業が供給力を増やしてきた影響も大きいと思う(潜在的な供給が需要に比べて非常に大きい)。また、欧州がデフレ化の気配を見せているのも、生産性の大幅な向上が原因ではないだろうか。

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〇需要が先か供給が先かは、「供給がそれ自身の需要を生む」(セイの法則新古典派経済学)と「需要がそれ自身の供給を生む」(ケインズ提唱)の2つある。セイの法則では、例えば工場を建てるなどの供給を増やすことが、需要を生むということだが、景気後退をうまく説明できない。ケインズでは、不況時の景気回復には需要喚起のための公共事業が有効であるが、結果的に非効率な支出(いわゆる無駄遣い)となるとの指摘から、一般的に支持されていない(ただ、いわゆる箱モノ投資は無駄だが、災害対策のための公共投資は非常に有効だと思うのだが)。いずれにしても、現在のデフレで需要がネックになっている状況では、需要を増やすことが、景気改善につながることとなる。

 〇アベノミクスの第1の矢である(日銀の金融政策である)量的緩和は、銀行が企業にカネを貸しやすくするもので、潜在供給を増やすものだ(その後、賃金上昇で家計にカネが回って需要が増えるが時間がかかる)。本気でデフレ脱却したいのであれば、需要増加しかなく、それには消費税据え置き(もしくは引下げ)が本当の対策だし、消費税を引き上げるというのは政府は本気でデフレ脱却したくないってことなのだ。

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