SSCからFDの流れ
〇現在、政府が進めているスチュワードシップ・コード(SSC)の根本にある思想は、「しっかり儲けて株主に配当を払え」という株主目線、利益重視の考え方だ。
「スチュワードシップ・コードの制定は、機関投資家を「物言う株主」に変えて投資先企業の経営監視機能を強化することで、企業の持続的成長や株主への還元を後押しするねらいがある。」
〇企業の役割(広義の利益の分配)は、基本的に4つだ。
・消費者により良い商品を安く届けること
・従業員にしっかりと給与を払うこと
・会社が、より良い商品のための新規投資やそのための内部留保を行うこと
・株主に配当を還元すること
〇 アベノミクスで賃上げを推奨していることや人手不足から、従業員給与の引き下げは現時点では困難だ。また、「画期的な商品を作る」「業務効率を上げる」という手段もあるが、すぐにできるものではない。その状況で、SSC(スチュワードシップコード)が推進されれば、利益を上げようとして、商品の価格を上げる(消費者利益の棄損)、もしくは、原価を下げる(質の悪い商品を提供する)ことになる。金融庁はそれを恐れて、フィデューシャリーデューティー(FD)を最近、急に推進してきたのではないか?(なお、FDとは、受託者責任ということだが、簡単に言えば、顧客利益優先ということだ。)
金融庁のいうフィデューシャリー・デューティーとは何か|森本紀行はこう見る|機関投資家・資産運用業界向け資産運用総合情報サイト【fromHC】
〇すなわち、企業は、顧客優先で商品の質を高めて・価格も引き下げて、従業員の賃上げをして、利益も上げろ、と金融庁から言われているのだ。(デフレで消費者の立場が強く、グローバリズムで株主が強い。割を食っているのは企業なのだろう。)
〇 直接的に関係ないかもしれないが、原価を下げるという点に関係して、文化財などは、(SSCでいう利益を生み出すものではないとの認識から、)費用(原価)は削減されがち(質が低下しがち)と考える。最近、日光東照宮でしっかりとした修復ができていないのではないか、という点がネットで話題になった。こういったことも、利益至上主義(スチュワードシップコード)の弊害ではないか?
・上が修復前、下が修復後だ。確かに、顔の凹凸と目の位置や、鼻の穴の角度など、修復前に比べてレベルが落ちているように感じられる。(修復を担った人はしっかり修復していただいたと考えるが、時間や費用などをもう少しかける必要はなかったのかについて、前回の修復と比較して検証する必要がある。)
日光東照宮の修復がひどいと話題に - Togetterまとめ
(参考)韓国でも、南大門の修復時に、その修復状態が良くないと問題になった。
かつての日本は美しかった:【「国宝第1号」 崇礼門(通称:南大門) 修復?】
・上が修復前、下が修復後。
〇基本的には、修復にどの程度コストをかけるのかという意識の問題なのだと思う。修復の重要性は、利益では図れないのだろう。