民主主義の憂鬱
〇民主主義国家とは、意思決定権を国民が個々に有し、国民の合意に基づいて政治が行われる体制のこと。民主主義ではない国家は、一党独裁制(中国)、最高指導者による独裁国家(北朝鮮)など。英国エコノミスト誌傘下の研究所が各国の民主主義レベルを評価した「民主主義指数」では、日本は「完全な民主主義」(20位)と評価された。ただ、本当に民主主義が望ましいのだろうか?
・2014年調査
完全な民主主義 |
欠陥のある民主主義 |
混合政治体制 |
独裁政治体制 |
24ヵ国 |
52ヵ国 |
39ヵ国 |
52ヵ国 |
人口の割合は13% |
人口の割合は36% |
人口の割合は15% |
人口の割合は38% |
イギリス、ドイツ、米国、日本、韓国、フランスなど |
チェコ、ベルギー、インド、イタリア、台湾など |
〇民主主義でない場合、個人に権力が集中してしまうため、権力維持に注力し、国民の生活が顧みられない可能性がある。中国は権力闘争に明け暮れている。ロシアは万全の態勢だが、余談は許さない。権力の魅力は、民主主義でも同じだが、主権は国民なので限界はある。
・タイは混合政治体制である。故プミポン国王は国民の信頼が厚かったが、新国王は素行が良くないうえに、権力強化を図っているようだ。その権力は限定的と思われるが、政権は不安定だ。
・日本でも安倍首相は、権力の魅力に駆られ、自民党総裁の任期を延長した。ただし、国民主権であり選挙で国民の審判がある。また、行政・立法・司法の三権分立させることで均衡と抑制が図られている。
〇民主主義は、国民主権であり権力が分散している(選挙で国民の審判が下される)という点で、民主主義の方が望ましい。ただ、民主主義の主な課題は2点。
① 国民が正しい判断ができるのか?
② 望ましい候補者(選択肢)がでてくるのか?
〇課題①は、複雑な政治を国民がどれだけ理解し判断できるのかという点だ。選挙では、政策よりもその人柄やマスコミ等での人気で判断される傾向があり、また、現状に不満があれば(内容に関係なく)対抗する政党に投票が集まることがある。
・2009年衆議院選挙では、自民党の自滅(相次ぐ首相の辞任等)に加えて、日本経済新聞などマスコミの「政権交代」キャンペーンや、小沢一郎の巧妙な選挙戦術により、民主党が圧勝した。振り返れば国民にとっては致命的な判断ミスであったが、マスコミは当然ながら反省していない)。
・2016年の英国EU離脱の国民投票では、ミュージシャンのノエル・ギャラガーはそんな判断は政治家で行うべきだ、と言っている。今議論している離脱時の何兆円もの巨額支払いは国民は想定外だろう。
・2016年の米国大統領選挙では、グローバル化・格差拡大に対する不満から、アメリカファーストという甘い言葉で人気となりトランプ氏が当選。現状を見れば、米国国民にとって致命的な判断ミスだった可能性がある。
小沢一郎の選挙戦術 - 先の衆院選、小沢一郎の選挙指揮なくし... - Yahoo!知恵袋
ノエル・ギャラガー「イギリス国民の99%が豚のうんこくらい頭が悪い」 : くまニュース
〇課題②に関し、現在の日本のデフレ環境下では、選挙時には経済対策が論点になるハズであるが、そうなっていない。次のまとめのとおり、経済面では、今の「古典的自由主義」(グローバル化・緊縮財政・消費増税)か「修正資本主義」(非グローバル化・財政出動・消費減税)かが論点となるハズなのだ。英国のEU離脱、米国大統領選挙は少なくもそれが論点となっていた。
意外に知らない!?社会主義と共産主義の違い - NAVER まとめ
http://www.findai.com/yogo/0072.htm
〇2016年の参院選挙では、経済面の政策では、各党ともグローバル化、緊縮財政を推進し、修正資本主義を掲げる政党はなかった。2017年の東京都知事選挙ではあるが、都民ファーストの会の政策も赤字削減(緊縮財政)だ。課題②に記載したように、選択肢が足りないのだ。
政策比較表2016参院選【経済政策・財政再建・税制】 | 政くらべ
http://www.morozumi-minoru.jp/pdf/policy-1.pdf
〇なぜ、日本では緊縮財政に反対する政党が出てこないのだろうか?これは、財務省が日本経済新聞社を通じて30年間かけて地道に国民を「人口減少」「国の借金」で洗脳してきたためだ。そのため、国民の間では(人口減少での人を呼び寄せる)「グローバル化」(国の借金返済のための)「緊縮財政」が必要との認識が出来上がってしまっていると考えてよい。これらの「人口減少」も「国の借金」もこれまでこのブログで説明したとおり何ら問題ではないものだ。この根も葉もないデマのために、国民の安全が脅かされ、未来のための適切な投資ができなくなっている上に、貧富の差が拡大している。これらの誤解を解いていくためにネット環境等を通じて地道に説明していくしかない。様々な人がこれらを理解し活動を続けているが、このブログでも少しでも貢献できればとの思いである。
〇ちなみに2017年のフランス大統領選挙では、左派(移民容認・EU残留)・緊縮財政派のマクロン氏が当選した。ポイントは2点あって、EUでは日本と異なり、各国に金融政策の権利がないのでEU残留であれば緊縮財政となるのだ。2点目は、選挙時にテロ等で移民問題にフォーカスが当たった結果、右派・財政出動派のルペン氏が選ばれなかったためだ。当選後、マクロン大統領は緊縮財政を推進しており、支持率は急落している。仏国民にとってそれしか選択肢がなかった(左派を選んだら緊縮財政だった)ので想定外だったかもしれない。それぞれを個別に政策選択できないことが民主主義の弊害の一つでもある。なお、日本でも、マイノリティ政党は移民反対・財政出動を掲げているが、まだ、国民には移民反対の意識醸成ができていないため、移民反対をアピールすることは、危険が伴う(共倒れになる)ので工夫が必要かと思う(個人的には移民反対派ではあるが、財政出動が最優先課題と考えている)。