アベノミクスとトリクルダウン理論

トリクルダウン理論とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論または経済思想で、サプライサイド経済学における中心的な思想だ。(しかし酷いネーミングだ。)

トリクルダウン理論 - Wikipedia

 

アベノミクスはトリクルダウンを狙ったものだ。

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アベノミクスの狙いは次のとおり。会社の利益は①会社②株主③従業員④消費者で分け合うこととなるが、特にアベノミクスでは「③従業員の賃金上昇」で景気回復を狙ったものだ。(①の会社による投資もあるが、投資先の会社と合計で見れば賃金上昇が狙いと考えて良いだろう。)

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それぞれどうなったか見てみる。なお、2014年度の企業の純利益は41兆3101億円と10%も増えた。これは、アベノミクスの思惑どおりだ。

 

会社の内部留保、2014年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の期末の利益剰余金は354兆3774億円と1年前に比べて26兆4218億円も増えた。率にして8%の増加である。

②2015年度の株主配当総額は前年度より1割多い10兆9000億円と初めて10兆円の大台に乗せるとのことだ。

従業員の給与の上昇は見られない(2015年3月時点)。失業率が4%まで低下したら上昇するとのこと。

物価の下落が見られている。会社は利益を商品価格の引き下げに回していることになる。これは消費者への利益還元となる。

 

〇以上、現時点では「③従業員の賃金上昇」は見られない一方、①、②、④は進んでいることが分かった。会社は利益が出れば、まずは競争で激化した商品価格を引き下げ従業員の賃金上昇は後回しになるのだろう。この会社の行動はデフレを促進させるものであり、(供給側の視点で緩和すれば景気が良くなるという)サプライサイドの理論は今の日本には無理があると思う。 

 

 (参考)