このままでインフレが起きると本気で思っているの?(経済雑記)

日本の過去のインフレ率推移はグラフのとおり。バブル崩壊(1991年)以降、インフレ率はほとんどマイナス、すなわちデフレ(物価が上がらない状況)だ(1997年、2014年は消費増税)。

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日本のインフレ率の推移 - 世界経済のネタ帳

 

インフレは起こるのか?インフレとはモノの価格の上昇であるので、そのメカニズムをミクロ経済(①供給面、②需要面)とマクロ経済(③モノ(供給)と④カネ(需要)の関係)から見る。

 

①供給面(会社)からすれば、モノの価格は次のとおり、かかったコストから導かれる。

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企業努力としてコスト削減・生産性向上を推進する中、現在の日本での供給面からの価格上昇の可能性は、円安等による原料費の上昇、消費税分の価格への上乗せ、また、従業員の賃金上昇分(あれば)の上乗せなどの外的要因がある。ただし、売り上げが減る可能性があるので、価格転嫁には企業は慎重だ。(デフレマインド。なお、日本以外の諸外国では一定程度のインフレとなっており、原料費の上昇や賃金の上昇などを踏まえた、価格上昇が比較的やり易いと思われる。インフレの場合、価格転嫁し易いことから、コスト削減のモチベーションは低い。)

 

②需要面から、モノの価格(どの程度の価格でどの程度需要があるのか)を見てみる。

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企業は需要の見通しによる想定利益を踏まえて価格決定していくことになるが、現在の日本では、シェア獲得のため、安い価格設定が求められる(例.セブンカフェ、格安スマホ)。また、販売前の見積もりよりも需要が大きかった場合でも、価格は上げずに販売中止にするのが一般的( 売れすぎて販売停止!の理由 - NAVER まとめ )。全般的に価格を上げていくには、景気の改善による需要の増加が必要なのであろう。

 

次に、インフレをマクロ的にモノ(総供給)とカネ(総需要)の関係で見る。インフレは、マクロ経済では、モノの価値が上がり、貨幣価値が下がることで起こる。すなわち、モノ不足(総供給減少)もしくはカネ余り(総需要増加)の状態だ。

③インフレの要素の一つである「モノ不足」(総供給減少)になる可能性はあるのだろうか?日本では同一業種で多くのメーカーが、モノづくりに努めてきた(例えば、総合電機メーカーでは、日立、東芝、三菱)。例えば、すべての電機メーカーが経営悪化などによりモノを作れなくなるということは考えにくい。また現状では、海外からの製品がグローバル化で手に入り安くなった(為替の安定が前提)ことや、アベノミクスでの第三の矢(規制緩和)は「供給サイドの経済学」(サプライサイド経済学 - Wikipedia)であり、「モノ余り」を更に進めるもの(デフレ推進策)。以上から、「モノ不足」になることはなく、商品供給力は潤沢と言えるだろう。

また、「モノ不足」となる要因として、消費者ニーズに沿った商品の提供がある。生活水準が向上・多様化した現在では、昔の家電(TV、洗濯機、冷蔵庫)のような需要が出てくることは難しい。企業が努力しているのはコンビニの商品サイクルの速さを見ても分かるが、一時的ブームを除いて持続的な需要の継続は難しいのだろう。

 

④「カネ余り」(総需要増加)はどうか?アベノミクスで行っている量的緩和では、「2015年3月の日銀資産を現在(158兆円)の2倍近い290兆円にまで膨らませる」ことを目標としている。市場の国債購入により130兆円のお金が銀行に行くことになる。この銀行に行ったお金が企業の貸し出しに使われれば、企業の投資や、将来的に賃金として家計に回ってくることによる総需要の増大に繋がる可能性がある。(量的緩和により一時的な景気改善(需要増加)となったが、消費税増税(需要減少)により足元は景気悪化傾向(8%への消費税増税に対する経済対策は約5兆円と消費増税分のたった1年分に過ぎなかった)。需要減少に伴い、銀行は引き続き国債を買っていると考えられ、金利が更に低下してきている。)

また、インフレの要因となる貨幣価値の低下には、「カネ余り」の他に貨幣の信用低下もある。財務省がよく言っているのは国の借金の財政破たん懸念である(ハイパーインフレにつながる)。ロシアでは一般家計もロシア財政危機の経験からドルを保有しているそうだ。財務省が煽っているものの、そういう状況には日本はなりそうもない。

 

〇まとめ 

 以上から、足元のインフレの可能性はほとんどないと言えるだろう。今後、日銀はインフレになるまで量的緩和を継続すると言っていることや、再度消費税があがるもののの高額商品以外をすべて軽減税率とすること等により、消費税の影響を一定程度なくすことができるか(増税しないのが一番だが)、がインフレとなるかのポイントだろう。

ミクロ経済 需要・供給面× デフレマインドの浸透から価格引下は今後も進む(セブンカフェ、格安スマホ) 
マクロ経済 供給(モノ)× 企業努力により商品供給力は潤沢 
マクロ経済

需要(カネ)

△⇒×

量的緩和はカネ余り(インフレ)の可能性があったものの、消費増税によりそれを打消しマイナスへ