山本一郎氏も。。。嗚呼
山本一郎氏のブログは、多彩な経歴・聡明で深い知識に基づくシニカルかつ歯に衣着せぬもの言いなので大変興味深く拝見しています。(やまもといちろうBLOG(ブログ))
が、この元旦に山本一郎氏からの寄稿がBLOGOSに掲載されました。
その中で、国の財政状況について言及がありました。「借金漬けで首が回らない家庭のような内容になっていて恐ろしい」という発言は、財務省の進める財政規律維持・緊縮財政に則った優等生的発言です。このような財政緊縮派の考え方は、山本一郎氏だけではなく一般的ですし、財政出動賛成派から財政緊縮派に移る人もいます。ただ、この考えは間違っていると思います。
国の財政(政府、企業、家計の合計)には負債と資産があり、それをセットで考えるべきです。まず、国の負債の残高自体は、日本の場合、これまでの経常黒字の累積で、資産と比べて世界一小さくなっています(日本の対外純資産が過去最大を更新 23年連続で「世界一の債権国」 - 産経ニュース、岩本沙弓の"裏読み"世界診断 (13) "21年連続世界一"となった『対外純資産』)。
〇2002年以降の主要各国の対外純資産の推移
そして、国の負債は、政府、企業、家計のどれかが負うことになりますが、日本の場合は、政府の負債が相対的に大きくなっています(規模では、企業が一番負債が大きい。他の国は、企業、家計の負債が大きくなっていると思います)。当然、倒産リスクのない政府(通貨発行権があるので)が負債を負うのが、(インフレリスクを除けば)社会的な安定の観点からは望ましいものです。また、政府の負債が大きいか否かは、インフレや金利で測れます。インフレ・金利上昇になれば政府の負債残高が大きいということになりますので、政府負債を減らす金融引締・緊縮財政が必要です。ただし、20年間のデフレ、低金利が続いてる現状では、政府の負債がまだまだ小さいということになります。そのため、今後、積極的な金融緩和・財政支出や減税を進め、政府の負債をもっと膨らませてやっとデフレ脱却に繋がるということです。(なお、日銀の量的緩和による金融政策だけでは、消費税増税の影響もあり、金利が下がっただけでインフレにはなりませんでしたので、財政政策(財政出動、減税)も必要です。)
〇各国の10年国債利回り(上図)とインフレ率推移(ともに日本は最低)
http://www.smbcnikko.co.jp/bond/market/pdf_bond/rate.pdf
以上のような状況にもかかわらず、消費税増税、緊縮財政が今後も続いているのは、政府の財政を家計に喩えて緊縮財政を進める財務省の思惑にのった人達が今の主流派(というかほとんどです)というためです。今後は、国民の意識が変化し、次の消費税増税までに、増税取りやめや大胆な財政出動に向かって行けるか、が課題となります。
2013 年秋季 IMF 世界経済見通しについて~「2%」のためには更なる追加財政が必要~
〇財政規律派:財務省、日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、藤巻健史氏、広瀬隆雄氏、ほとんどのエコノミスト・経済評論家、その他大勢
〇財政出動派:クルーグマン氏、藤井聡氏、田村秀男氏(産経新聞)、ぐっちー氏、三橋貴明氏、などごく少数派
・財政規律派:広瀬隆雄のブログ(好きなブロガーでよく拝見していますが、藤巻氏と同様、株式寄りのアナリストは財政赤字を問題視する傾向にあるようだ。財務省とはつながりなさそう。)
・財政規律派エコノミスト:消費増税後の景気については、有名な多くのエコノミストは事前予想をことごとく外していた。景気が悪くなりそうっていうのは素人でも分かりそうだけど。消費税を上げさせたいので、事前に家計へのヒアリング調査などおかまいなしに、景気が維持すると予想してたのだろう。
当たらない経済指標予想 高橋進,熊谷亮丸,高田創,木下智夫,牧野潤一