日本経済新聞の使命

日本経済新聞は、長期に継続する金融緩和が国債の市場機能を歪めていると批判し、金融緩和を取りやめていくことを度々掲載しています。最近でも2023/1/19の記事に「債券市場、続く機能不全」「日銀操作、近づく限界」との記事を掲載しています。これらの批判と一時的な円安を受けて、黒田日銀は12月にサプライズの金融緩和の見直し(実質的な利上げ)を実施しました。利上げは経済にマイナス(借入の負担増)であることから、この見直しにより日経平均株価は2万8千円台から2万6千円と下落、日本経済新聞の意見により、経済が悪化しました。

今はコロナ禍からウィズ・コロナへと回復の時期に当たります。コロナ禍での経済悪化を避けるために各国が実施した財政支出は、今は経済を好転させインフレ基調になり、特に財政支出の大きかった米国は景気過熱・過度なインフレにより、金融引き締めが行われています。日本でもコロナ禍での財政支出の恩恵により、企業・家計の貯蓄が増加し(経常収支はプラスなので、財政支出は企業・家計の貯蓄に回ります)、一時的な円安による企業物価上昇に対し、家計も物価上昇を受け入れる素地ができてきています。その状況を受けて、企業は賃金を上昇させることを検討しています。これらは政府の財政支出による好循環であり、30年続いたデフレからの脱却が少しずつ見えてきているところです。

経済は循環し、過熱(インフレ)や減速(デフレ)を繰り返します。これらに対し、これまでの恐慌、リーマンショック、日本デフレなどの経験からは、政府・日銀による財政政策・金融政策で乗り越えられることが(反例も含めて)示されています。日本の長引くデフレは、低金利下では金融政策が効かない(ケインズ流動性の罠)にもかからず、日本経済新聞は消費税増税・緊縮財政推進で日本経済のデフレを長引かせました。ちなみに日本の財政は、インフレではなく、かつ、経常収支がプラスであれば、全く問題ありません(インフレや経常収支マイナスの場合は、需要過多・円安(いわゆるモノが売れる状態で、モノづくりが回復することで経済が回復(経済の循環)します)。今の極端な日銀の日本国債保有は、頼るべきではない金融政策に依存したためになりますが、日銀の財政も日本政府の財政と同じく全く問題ありません。

いずれにしても問題視すべきはデフレです。長期のデフレにより、経済減速、賃金低迷、人口減少、投資減少、地方疲弊などにつながりました。すなわち、賃金低迷から多くの人が結婚や子を持つことを断念しました。また、デフレにより、企業は、開発ではなくコストを下げることに時間をかけ、これが成長力の停滞になりました。ほんの1例ですが、町山智浩さんが2023年1月10日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で日本映画と韓国映画の映像の違いについて、「韓国映画って日本映画とは決定的に画が違うじゃないですか。深みが。あれって、いいカメラを使っているからなんですよ。」と日本映画の衰退について語っていますが、これもコスト削減というデフレ・マインドが一因となります。デフレ脱却には、モノの価値が低すぎるので、財政支出によりカネの価値を相対的に低める必要があります。カネの価値が下がるのであれば(期待インフレ)、皆が投資しようと考えます。それらの投資がモノを買うことにつながり、経済が好循環します。

繰り返しですが、そのデフレ脱却には、財政支出を促すことが重要です。デフレ下で日本経済を良くしたいのであれば、日本経済新聞は支出のムダを批判するよりも、支出の不足を批判すべきです。そして、デフレ脱却後には、過熱気味になる前に無駄遣いを批判すべきです。真に日本経済の事を考えるのであれば、経済は循環するのでバランスをとった報道をすべきだし、デフレが長期継続している中では、決して消費税増税を推進すべきではないのです。

そのため、2023/1/21日本経済新聞の年金のマクロスライドによる実質目減りの記事や大機小機の桃李氏がコメントしているデフレ脱却を優先すべきという主張は、望ましいものです。引き続き日本経済新聞には、デフレ脱却のための正しい主張をお願いしたいと思います。

 

フィンチ